約 1,869,159 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3805.html
前ページ次ページもう一人の『左手』 <フリッグの舞踏会、PM9:15> 「――あのばか犬……!!」 ルイズは、一人呟いた。 ドレスに着飾り、普段あまり熱を入れない化粧にも時間をかけ、持ち前の高飛車オーラを、普段余り見せない淑やかさでカバーした彼女は、確かに美しかった。いつもの彼女を知らない者たちには、――神々しい、とさえ見えるほどに。 それまで彼女を、ただの劣等生としか見ていなかった、この学院の男子生徒たちが色めきたったのも、むべなるかな。彼らは、この少女・ルイズ・ラ・ヴァリエールが、元来、校内屈指の美少女であった事実を、ようやく思い出したのだ。 当然、紳士たちによるダンスの誘いが殺到したが、ルイズは、それらの甘い言葉を、普段はまるで垣間見せぬ優雅な振る舞いで、――拒絶し、壁の花に甘んじた。 「ちっ、なんだい。『ゼロ』のくせに、お高く止まりやがって」 少年たちは、この美少女が――物腰こそ典雅ではあっても――自分たちなどまるで眼中にない事に気付くと、次第に彼女を敬遠し、距離を取って毒づいた。 そして女の子たちも、自分たちの恋人・彼氏の視線を、一時ではあっても独占した彼女を、当然のごとく冷たい目で見た。 「ふん、何よアレ、『ゼロのルイズ』のくせに」 しかし、ルイズはもとより、そんな視線など気にもしていなかった。 いや、それはこの場だけの話ではない。今では以前ほど、彼らに『ゼロ』と呼ばれる事が気にならなくなってきている。それは確かだ。 『ゼロ』呼ばわりされる事に慣れたわけではない。 ただ、彼ら同級生たちに何を言われ、笑われても、ムキになって感情を爆発させるのが、バカバカしくなってきただけだ。 「ねえねえ、『ゼロ』のルイズって、たしか今日の品評会の、あの……?」 「おお、あれあれ、――メイジを知りたきゃ使い魔を見ろって言うけど、あそこまでアレだったら、むしろ哀れすぎて言葉も出ねえよ」 「姫殿下の御前で、あそこまで使い魔に恥をかかされたら……わたしだったら、殺してしまうかも知れないわ……!!」 「姫様、ウケてたけどな」 「むしろ、ウケてたの、姫様だけだったじゃねえか」 級友たちが、才人の話をしている。 まあ、今日の品評会で、あのバカがやった事を思い出したら、その程度の噂は当然だったが、……それでも、あんな奴らに才人を悪し様に言われる筋合いは無い。その怒りは、むしろ自分が『ゼロ』呼ばわりされた時よりも深いものだった。 だが、それと同時に、こうも思う。 (しょせん、あいつらにサイトの価値は分からない) そう思うことで、彼女は僅かながらに、溜飲を下ろした。 ――確かにルイズは変わったかも知れない。 これまでルイズは、彼ら級友たちの輪に、なんとかして入りたいと思っていた。 『ゼロ』と呼ばれ、馬鹿にされ、親しい友人すら作れず、それでもルイズは、彼らに認められることを望んだのだ。彼ら同級生たちはイヤな奴らであったが、それでも、彼らは貴族――自分と同じ世界の住人だったからだ。 逆に言えば、これまでの彼女にとって、貴族たちのいない風景は、『世界』ではなかった。 だから、たとえ自分と同じく魔法が使えない者たち――平民たちと交遊するという選択肢は、完全にルイズの発想の外だった。何故なら『平民』たちは、彼女の世界の住人ではなかったからだ。 だが、ここ最近、彼女の思考回路は、確実に変わりつつあった。 たとえ、どれほど名門の貴族であっても、優秀なメイジであっても、人間の価値は、そこにはない。才人や風見を身近で見るにつけ、彼女は無意識の内に気付いてしまったからかもしれない。 現に、ついさっきまで、自分を『ゼロ』と白眼視していながら、ちょっと着飾って現れれば、それだけで掌を返したように、次から次へとダンスを申し込んでくる、軽薄な男たち。 そして断られれば、その傷付けられた、ちっぽけなプライドを癒すために、いとも簡単に、返した掌を再度ひっくり返すことに、何の躊躇も恥じらいも持たぬ者たち。 彼らはまぎれも無い貴族――自分が所属し、それを認めてもらう事を切に願った者たち――なのだ。 そんな連中の視線に、いちいち反応する事に何の意味がある? ルイズは、級友たちへの失望とともに、いつしか、そう考えるようになっていた。 しかし、ルイズが、彼らを拒絶したのは、ただそれだけではない。 彼女が心に決めた今宵のダンスパートナーは、彼らならぬ、ただ一人の少年だけだったからだ。その彼のためだけに、少女は一張羅のドレスを引っ張り出し、不慣れな化粧に時間を費やしたのだから。 この頑固な少女は、その事実をあくまで認めたがらないであろうが。 しかし、その少年――平賀才人は、いま、ここにはいない。 <フリッグの舞踏会から8時間前> 晴天に恵まれた『使い魔品評会』も、いまや佳境を迎えていた。 次から次へと登場する、種々様々な使い魔たち。 そして、その使い魔たちの“芸”を誇らしげに見せつける、若きメイジの卵たち。 しかし……にこやかな笑顔の下で、その実、アンリエッタの目は、ほとんど何も見ていない。 アニエスだけが、それに気付いていた。 アニエスは、アンリエッタの近侍として仕えるようになって、はや数年経つ。 警護役――というわけではない。 彼女が騎士に叙勲され、『銃士隊』を束ねるようになるには、さらに時を待たねばならないからだ。 だが、それ以前から彼女は、アンリエッタの信頼深き侍従として、つねに女王の近くにあった。 平民上がりではあるが、彼女の硬骨で頼りになる人柄や、つねに冷静で、機転が利く判断力が、王女は気に入っているのだろう。、 毎年恒例のこの行事。 アンリエッタの従者として、アニエスがこの品評会を鑑賞するのは、今年で5回目になる。 だが彼女たちが、純粋に品評会を楽しめたのは、最初の二回までだった。 学生たちが召喚した、色々な使い魔たちは、確かに興味をそそられて然るべきだ。 だが、――彼らは、その使い魔に『何をさせるか』という一点において、ほぼ哀れむべきレベルで、発想が貧困だった。 サラマンダーが炎を吐き、鉄塊を溶かす。 バグベアードが、その巨大な瞳で、人に催眠をかける。 バジリスクがその猛毒で、巨大な牛を噛み殺す。 ジャイアントモールが地中を掘り進み、地面にバラ撒かれた宝石を、一粒残らず拾い集める。 確かにスゴイ、と思う。 本来なら、滅多にお目にかかれない生物が、その特性を生かして“芸”をしてみせる姿は、とても微笑ましいものがある。 しかし、――しかし、だ。 鳥が空を飛ぶのを見て、感動する者がいるだろうか? いるとすれば、それは鳥という生物を、生まれて初めて見た者だけだ。 そして悲しい事に、毎年この品評会に招かれているアンリエッタたちには、もはやメイジの使い魔として召喚される生物の大半に見覚えがある。だから、その使い魔を見れば、どんな“芸”をするのか、できるのかが、大体予想がついてしまうのだ。 なぜなら、品評会に参加するメイジのほとんどが、その使い魔が『出来る事』しか、やらせようとはしないからだ。 ――もっと、いい意味でわたしを裏切ってくれる者は……やはり今年もいませんでしたね。 そう言って、帰途の車中で寂しく笑うアンリエッタを、もうアニエスは見飽きている。 その思いは、例年通り、今回もまったく変わらない。 だか――それでもアンリエッタは、笑顔と拍手は欠かさない。 アニエスと二人きりの状況ならば知らず、公の場での彼女は、見事なまでに王女のままだった。 つまらない“芸”を、さも誇らしげに披露しながら去ってゆく学生たちに、いかにも感動したという態度を、何があっても崩さない。 この場で“芸”を披露してくれている彼らの根幹にあるのは、王家と自分に対する忠誠心であると、アンリエッタは深く理解しているからだ。 忠誠を捧げてくれる者に、礼を返すのは、王族たる者の義務である。そして、この場における礼とは、彼らに対する、いかにも感動したという“演技”に他ならない。 それが、自分がここにいる意味だと、彼女は理解しているからだ。 そんなアンリエッタを、アニエスは素直に誇りに思っていた。 アニエスにとって、王女とともに出席を義務付けられている退屈なイベントなど、この品評会以外にも、掃いて捨てるほどある。 だから、彼女にとって、退屈が不慣れだというのば、ほぼ嘘に近い。 しかし、それを言うなら、自分以上にアンリエッタとて同じ事だったはずだ。 彼女は王族だ。退屈を退屈として楽しむ術くらいは身に付けている。だから、本来ならば、毎年恒例の退屈なイベントも、それなりに楽しく過ごせていたはずだったのだ。 ――去年までは。 だが、今年に限って言えば、アンリエッタにそんな余裕は感じられない。 一見、その笑顔も眼差しも、いつもと何も変わらないように見える。 だが、それでもアニエスには分かる。主の笑顔の下に隠された、焦りや苛立ちが。 彼女に何があったのか――それは一介の従者でしかないアニエスには分からない。 いまのアニエスに出来る事は、せめてこの退屈な品評会が早く終わり、主が自分に、その胸中を相談してくれる事を祈ることくらいなのだ。 (あと何人ガマンすればいいの……?) そんな思いを、顔に出さないように、懸命に努力しながら、参加者名簿をちらりと見る。 その時、アンリエッタは初めて気付いた。 自分が、ここに来た目的であるはずの彼女が、この品評会にエントリーしていない事を。 (おかしいわね……。何故ルイズの名前が無いのかしら) 彼女はさり気なく、学生たちが座る客席に目を向けた。 ルイズは、いた。 彼女のピンク色の頭髪は、遠目にもよく目立っていたので、あまり視力のよくないアンリエッタにも、すぐに彼女は見つかった。 しかし、……何故かルイズは席には座らず、後方の塔の壁にもたれて、ぼんやりとしていた。 いや、その隣に、もう一人誰かいるようだった。 青い髪をした、眼鏡をかけた少女が。 「ねえ、タバサ」 「なに?」 「あなた、なぜ品評会に参加しなかったの?」 ――そう、今回の『使い魔品評会』にエントリーしていない生徒が、自分以外にもいたと聞いて、ルイズは驚きを禁じえなかったが、……それがタバサと聞いて、妙に納得してしまった。 「興味ない」 まるで測ったように予想通りの答えが返ってくる。 まあ、この子なら、そう言うだろうなと思いつつ、問いを重ねてみた。 「興味ないって……優勝すれば、姫様から直々にお言葉を頂戴できるのよ? それに賞金も入るし……第一、シルフィードなら普通に優勝を狙えるじゃない?」 「興味ない」 「それは、姫様のこと? それとも、賞金のこと?」 「両方」 「……あんまりそういう事、他人に言わない方がいいわよ」 予想通りとは言え、さすがに何の躊躇もなく、そういう事を言われてしまうと、ルイズとしても、眉をひそめざるを得ない。 アンリエッタ姫は、ルイズにとっても、かけがえのない“幼馴染み”であり、それ以上に、崇拝してやまない忠誠の対象だからだ。 しかし、タバサはそう言われても、本から顔を上げようともしない。 ルイズは、溜め息をついた。 この子は、目立つのが嫌いらしいというのは、雰囲気で分かる。 だから、この学院の一大イベントを、こともなげに欠席できる。 自分と違って、アンリエッタ姫に、特に思い入れも無いようだ。 そう思って、ルイズは思い出した。 このタバサは、キュルケと並んで、自分たちの学年のたった二人のトライアングル・メイジであったことを。 タバサほどの魔法の才があれば、誰かに認めてもらいたいなどと、切に願った事など無いのかも知れない。 ルイズは、ぼんやりとそう思った。 ふと舞台に目をやると、モンモランシーのカエルが、喉を鳴らして、曲を演奏しているようだったが、ルイズはすぐに見るのを止めた。 モンモランシー自身ガチガチに緊張しているようだったし、何より曲自体、音もリズムもバラバラで、聞くだけで頭痛がするような、ひどいメロディだったからだ。 確か、プログラムによると、彼女がトリだったはずだ。 なら、ようやく、この品評会も終わりということか。 結局、風見は見つからず、品評会への参加を命じる事は出来なかったが、まあ、彼への苦手意識が払拭できないルイズは、ある意味、風見に逆説教を受けなかっただけ、幸運かも知れないと、自分を慰めた。 ルイズは、自分の席に戻るべく、壁際を離れた。 タバサはまだ本を広げていたが、声をかける気にもならなかった。 来賓席のアンリエッタをちらりと見る。 彼女は舞台を一心不乱に見ているようだった。 さすがに一国を背負う者は違う。あんな、見るも無残な芸であっても、真摯に聞く態度を崩さない。 席についた頃、ようやくオールド・オスマンの終了の挨拶が始まったようだった。 その時だった。 「ちょっと待ったぁっ!!」 ――どこかで聞いたことのある声だった。 ふと舞台に向き直った瞬間、ルイズは驚きのあまり、のけぞり返りそうになった。 彼女のよく知る少年が、何より、ここにはいないはずの少年が、舞台に上がりこもうとしていたのである。 「サイト……あの、ばか……なんでここに……!!?」 ルイズは知っている。 彼のパーカーに覆われた包帯の下は、再び開いた火傷の傷痕からの出血と化膿で、ぐずぐずになっており、決して無理が出来るコンディションではないということを。 才人は、抜き身のままのデルフリンガーを片手に持ち、舞台の中央に陣取ると、そこにデルフを突き立てた。 そして、そのまま来賓席に向き直り、呆気にとられているアンリエッタに、 「お初にお目にかかります、お姫様。おれはヒラガサイト。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ラ・ド・ヴァリエールの使い魔でございます」 そう言うと、深々と一礼する。 (間違えてるし! アイツ御主人様のフルネーム、間違えてるし!!) 何をする気だ、あのバカは!? ルイズの拳は震えていた。 <フリッグの舞踏会終了から2時間後> 「お隣、空いておられますか?」 そう言って、ボックス席の差し向かいに座ってきた青年に、男は、いぶかしげな目を向けた。 ここは、トリステインの城下町――トリスタニアにある、とある大衆酒場。 男は店の隅にある、一番おんぼろなテーブルに陣取り、酒を飲んでいた。 『酒神(バッカス)の盃亭』と名付けられた酒場の主人は、男の人間離れした怪力を見て、二つ返事で彼を用心棒に雇ったが、すぐにこの契約が失敗であった事を悟った。 なにせ男は何もしない。トコトンなまでに何もしない。 眼前で、客が喧嘩を始めても、酔った貴族が、店付きの娼婦にからんでも、ただ黙々とまずそうに酒盃を嘗めるだけだ。 その凄まじい怪力を、目の当たりにしているだけに、主人は今更クビだとは言えない。 解雇を直接宣告するには、男が不気味すぎるという点がある。 また、それ以上に、まだ雇って二日しか経っていないという事実もある。もう少し様子を見よう。――主人は、そう妥協した。 そんな晩だった。 その、得体の知れない用心棒の前に、青年が現れたのは。 青年――たしかに、若い男だ。 羽帽子を目深にかぶっているが、その隙間から見える眼光は、鷹のように鋭く、顎まで伸びた見事なヒゲは、まるで『三国志』の関羽のようだ。そして、その動きのしなやかさは、体術にも、相当な心得があるように感じられた。 「席なら、向こうにいくらでも空いてるだろ。消えな」 「いえ、わたしはここに座りたいのです。――と言うより、貴方と一緒に酒を酌み交わしたいのです。いかがです?」 しかし、男は、青年の馴れ馴れしい発言の裏にある、かつて嗅ぎ慣れた匂いを思い出した。 「おめえ、メイジか?」 間違いない。マントこそ羽織っていないが、他人に命令する事に慣れた声音――貴族独特の傲慢な空気が匂ってくる。 どこかに杖を隠し持っているのだろうが、――まあ、どっちでもよかった。 男にとっては、眼前の青年が、たとえスクウェア・クラスであっても、全く怖くはない。 ただ、怖くは無いが、気に入らないのも間違いない。そして男は、自分が気に入らない者と、酒を飲む習慣は無かった。 「失せな。俺はメイジが嫌いだ」 男がそう言うと、青年は静かに微笑んだ。 「確かにわたしはメイジです。しかし、貴方ほどのお方が、一介のメイジを嫌う理由は無いでしょう? 仮にも、伝説の魔獣として、一国を滅亡の淵まで追い込んだお方には」 男はピクリと眉を潜めた。 が、青年は意にも介さず、男の、空になったグラスに酒を注ぐ。 「貴方の、そのお力をわたしたちに、今一度お貸し願いたいのですよ、魔獣殿。――いや、『破壊の杖』の悪魔殿、と呼んだ方が宜しいですかな?」 男は、無言で目を細めた。。 眠っていた獅子が、むくりと起き上がったかのような、凄絶なまでの迫力があった。 「自殺しに来たのかい、坊や」 しかし青年は、眼前の男――改造人間カメバズーカこと、平田拓馬の炎のような“気”を受けて、顔色一つ変えない。 前ページ次ページもう一人の『左手』
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/2297.html
DQⅦ 主にイベントで使われる曲。 ゲーム中でも数えるほどしか聞けないのであまり印象に残らないが、名曲。 具体的に流れるシーンを挙げると、 【キーファ】との別れ 【エペ】の回想 コスタールで詩人が【アニエス】の事を語るとき DISC2突入直後のフィッシュベルでの宴で【ヨハン】が演奏 PS版ではこれだけだが、リメイク版では、 【ルーメン】で【チビィ】と別れる(あるいは戦う)際の夜の街 でも流れるようになった。
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/5270.html
珊海王の円環(設定) 過去の勝者の願いを打ち消す願いは叶えられない。アニエス編でエルフの森の復活が不可能なことやエルフ達の蘇生ができない状態にある事が語られる - 名無しさん (2024-07-02 08 48 34) その会話だと過去の勝者の願いに反しないなら死者蘇生自体はできる感じもする。ただアルヴィド姉とかソーニャの師匠とか見るに変な叶えられ方をしそうではあるか。不死者みたいにして復活みたいな - 名無しさん (2024-07-02 08 52 02)
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4171.html
344 名前: 目覚め(1/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 28 38 ID f/+EaLjV 10巻108頁付近より 「出ろ、サイト」 空に二つの月が輝きだした頃、銃士隊長アニエスは牢に来るなりサイトの喉元に剣を 突きつけて言い放った。 時間も時間な為、一緒に居たギーシュを始めとする数人の水精霊騎士隊のメンバー やルイズは既に寝息を立てており、起きているのは色々と考えて眠れなかったサイトのみ であった。 「……」 サイトは促されるままに立ち上がり牢を出ると、アニエスから杯を渡された。 素直に受け取り飲み乾すと、急激な眠気に襲われ、抵抗する暇も無くその場に崩れ 落ちてしまいそうになる。アニエスはサイトの身体が倒れこむ直前にそれを軽々と抱える と、城の地下へと歩いていった。 345 名前: 目覚め(2/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 29 36 ID f/+EaLjV サイトが目を覚ましたのは、城の地下にある拷問部屋だった。 天上から吊るされた手枷によってサイトの両腕は大きく開いて固定され、また両足も同 じく開いて拘束されていた。 目隠しをされている為何も見えず、また目を覚ましたばかりで状況が掴めていない事も あり、彼は身体を捻って何とかこの状況を察知しようとするが、その度に手足を繋いでい る鎖がガチャガチャと音を立てるのみであった。 何だ?俺は一体…そうだ! 牢に入ってたらアニエスさんが呼びに来て、何かを飲まされたんだっけ その後急に眠くなって…それから… 「ちょ、アニエスさん!これ、どういう事ですか!」 しかし、その問いに答えは返ってこなかった。 代わりに、彼の背中を上から下へスーッと何かが這った。 「ひゃぅ…」 サイトは突然の事に嬌声を上げ、身をくねらす。 (な、なんだ…) 続いて背中に当る膨らみを感じ、自分が今全裸である事に思い至る。背中に当る膨 らみからは彼女の肌の温もりが直接伝わっており、後ろの女性も裸である事が確認され た。 サイトは考えを巡らそうとするが、直後に後ろの女性が腕を回して背後から彼の胸や腹、 果てには彼のシンボルまでを弄りだした事により、思考は中断させられてしまった。 「おい!誰だか知らねーけど、一体何の真似だよ!」 サイトは声を荒げるが、その声は視界を遮られている不安と、全身に送られてくる微弱な 快感の電気によって震えていた。 背後から彼の身体を弄る手は動きを休めない。それどころか、背後の女性はチュッと音を 立ててサイトの肩にキスをすると、そのまま彼の全身にキスの雨を降らせ、舌で彼の身体を 舐めまわすのだった。 「お、おい、止めあぅ…止めてくれ」 しかしその願いは聞き届けられず、逆に激しさを増すかの様にチュッチュッと音を立てて吸い 付く。彼女の舌の這った後には、彼女自身の興奮度を示すかの様に唾液の線路が描かれ ていく。また、彼女が時折強く吸い付く為、サイトの背中には斑点のように赤い模様が付け られていた。 彼女はサイトの脇の下へと移動し、乾ききった汗を全て吸い取るかの様に丁寧に舐めあげ、 そのまま舌を離すことなく左上腕部へと這い上がる。彼女は口を開きその部分を咥えると、 ハーモニカを吹くかの様に顔を左右に揺らし、扱きたてる。もちろんその際、舌で刺激したり 歯を立てるのも忘れない。 サイトの口からは『ぁひぃ』やら『はぅ』やら、擽ったがっているのか、それとも感じているのか、ど っちとも取れる喘ぎ声が漏れている。その声が耳に入る度、彼女は背筋に微弱な電流を流 された様なゾクゾクとした感覚を受け、自身の秘奥から蜜液が溢れ出すのを感じていた。 彼の前面に回り込むと彼女は舌なめずりをし、彼の左の乳首に自らの唾液で濡れた唇を 近付ける。そこに軽くキスをすると、次いで真っ赤な舌を出して彼の乳輪をなぞる。 346 名前: 目覚め(3/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 30 38 ID f/+EaLjV 「ぁああ…ぉおう…」 絶えず漏れる彼の熱い吐息を心地よく感じながら、彼女は視線を上げる。そこには当初こ そ硬い表情で警戒を怠っていなかったが、今となっては口を半開きにし、少しでも与えられる 快感を貪欲に貪ろうとしているサイトの表情があった。幾重にも巻かれた黒いリボンによって視 界は塞がれているが、それが却って彼の感覚をよりいっそう敏感にしていたのだ。 彼女はそんなサイトの表情を満足げに見つめると、その中心で自らを誇張しだした彼の胸の ボタンに舌を目を向け、触れるか触れないかといった微妙な力具合を保ちながら舌先で刺激 を与えている。すると彼はもどかし気に身体全体を揺らし出したので、そんな彼の要望を確認 すると、彼女は彼の乳首に歯を立て、歯軋りをするように上顎と下顎を交互に動かした。 「ぁは…ぁあああ…」 少女の様な嬌声を上げる彼の空いている乳首を左手で摘むと、彼女は軽く力を込めて捻り 上げる。右半身から送られてくる快感が、左半身から送られてくる痛みをも快感へと導き、彼の 口からはうわ言のように『もっと…』という言葉が漏れていた。 そんな呟きが聞こえているのか聞こえていないのか、彼女はスッと彼の身体から離れると、その 場に跪く。しかし、視界を奪われているサイトは、彼女が離れていった事により快感が途絶えてし まい、一抹の不安を覚えてしまう。それを表情にありありと表し、必死になって彼女を探そうと暴 れだすが、手足の枷を繋いでいる鎖がガチャガチャと耳障りな音を立てるのみであった。 その時、いきり立った彼の分身とも言える部分が、彼女の頬を張ってしまう。 「あっ…ご、ごめんなさい」 その感触にサイトは彼女の機嫌を損ねてしまう事を恐れたのか、普段とは打って変わってしおら しい声音で謝罪の言葉を口にする。 そんな彼の思いが伝わったのか、彼女は一瞬優しそうに微笑むと、今しがた自分の頬を叩いた 彼の分身にそっと手を添え、先端部分をぺろりと舐め上げた。散々じらされた彼のソコは既に涎 をたらしており、彼女が一舐めしただけでビクンと振るえ、彼の限界が近付いている事を物語って いた。 彼女は大きく口を開くと、目の前で今にも爆発していまいそうなソレを咥え込んだ。 幹の部分を唇で扱きたて、傘の張り出しをチロチロと舌で刺激し、先端の割目に舌先を当て、 まるで穿つかのようにグリグリと押しやる。 右手では床に水溜りを作りそうなくらいに溢れ出す自身の蜜を掬い、彼の臀部に回され、奥に ひっそりと息づく菊門と、彼の陰嚢と肛門の間―“会陰部”とも“蟻の門渡り”とも言われている部 分―をなぞり上げる。左手では彼の陰嚢を包み、二つの睾丸をやわやわと揉んでいた。 そっと彼の表情を見やると、彼女の口腔内の温かさと、全体を嘗め回す舌が送る快感、また彼 女の両の手が与える刺激によって何も考えられなくなっているらしく、ただ口をパクパクとさせるのみ であった。 「―――――-!!!」 突然、予告も無しに吐き出される彼の迸りを彼女は口腔内で受け止め、更に搾り出すかのよう に彼の分身を唇で扱きたてる。ようやく最後の一滴までもを吐き出したソレは、彼女の口から開放 されると力なく頭を垂れていた。 347 名前: 目覚め(4/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 31 28 ID f/+EaLjV サイトの分身から吐き出されたモノを口に含んだまま立ち上がると彼の頭の後ろへと手を回し、彼 の視界を奪っていた戒めをゆっくりと解き放つ。放心していたサイトが漸くその事に気付き、ゆっくりと 瞼を持ち上げると、そこには見知った顔、しかし思い描いていた相手とは違う顔が妖艶な笑みを浮 かべていた。 (――姫さま?) サイトが自分を認識したのを見届けると、トリステイン王国の現女王であるその人―アンリエッタ― は、自身の両手を器にし口腔内に貯められたサイトの欲望を吐き出した。 「いかがでしたか?サイト殿」 優しく語り掛けるアンリエッタに、サイトはただ呆然としていた。信じられなかったのだ。時折見せる 弱々しいが故に美しく光り輝いていたあの表情。そんな表情を持つ彼女が今、サイトの目の前で 妖しく艶かしく微笑んでいるのだから。 「ふふ、どうかなさいまして?」 「どうしてこんな事を…」 少女を目で追い、サイトはそう尋ねた。当の少女は怪しく微笑んだままサイトの背後へと移動し、 両の手の平に大事そうに持っていた彼の迸りをサイトの尾?骨辺りから垂らした。そしてその奥にあ る窄まりに擦り込む様に、彼の臀部に左手を添え揉み解す。 「あぁぁ…そ、そこは…」 吐出したばかりの為、普段は排泄にしか使われない場所への刺激もかなりの快感を伴って彼を 翻弄していた。サイトは首を捻ってアンリエッタが刺激を与え続ける部分を見、次いで彼女の顔に 視線を移した。 アンリエッタはというと、傍らに置いた木箱から何やら黒い棒状のモノを取り出し、振り向いたサイト の眼前に掲げる。 「これ、何だか分かりますか?サイト殿」 サイトは虚ろな目でソレを見る。どこかで見た覚えのあるソレは、何故だか懐かしい感じがした。 そう、ソレはサイトが元居た世界で友人から借りた青年誌や、パソコンのアダルトサイト等で見受 けられるモノであった。 (……?これって確か、女性同士が使う…) サイトは頭の片隅から過去の記憶を総動員し、やっとの事で思い当たる。 ソレは彼の世界では双頭ディルドーとも呼ばれている、一般的に同性愛の女性同士がお互いに 繋がり、快感を得るために使用されるモノに良く似ていた。 「これはですね…ん…あはぁ…代々王家に伝わるマジックアイテムでして…」 アンリエッタはソレの片方を自身の蜜壷にゆっくりと押し入れながら話し出すと、何やら呪文を唱え 始めた。するとソレは、まるで彼女の体の一部であるかのように変化し、彼女の太ももまでをも濡らす 蜜がソレの先端から滲み出ている。 サイトはその変化に目を奪われていたが、体内に異物が押し込まれる感覚に呻きにも似た嬌声を 漏らす。アンリエッタが彼の窄まりに人差し指を第二関節まで押し込んだのだ。 348 名前: 目覚め(5/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 32 06 ID f/+EaLjV 「愛する殿方に自分を刻み込み、忘れられなくする為のモノなのです」 今でこそ王族とはいえ重婚は認められてはいないが、遥かな昔、ここトリステイン王国でも王には 第一王妃、第二王妃といった形で重婚が見受けられた。また妾を多く持つ事こそが王の器としての 必須条件に挙げられた時代もある。そんな折、第一王妃となる人物はソレを使い、王を繋ぎとめた のだとアンリエッタは説明した。 しかし、アンリエッタが彼の体内で指を蠢かす為自身の喘ぎ声で消されてしまい、サイトは彼女の言 葉をはっきりと聞き取る事は出来ないでいた。 「今からコレで、貴方を可愛がって差し上げますわ」 サイトの耳元でそう囁くと、アンリエッタは彼の肛門から指を引き抜くと代わりに自身に装着したソレの 先端を宛がい、一気に彼を貫く。ソレは彼女の指くらいの太さしか無かった為、すんなりとサイトの体内 に飲み込まれた。が、そこで変化が訪れた。サイトの体内に侵入したソレは、根元まで押し込まれた瞬 間、先端部分を球体に変化させたのだ。 「あっ…ぁあっ…ぁああ…」 彼女の動きに合わせて、彼は直腸の奥まった部分や入口付近を先端の球体によって刺激を受け、 絶えず嬌声を漏らしていた。ソレは彼の直腸のみではなく襞を通して前立腺までをも刺激しており、い つしか彼の分身は先ほど吐き出したばかりだというにも関わらず、さらに大きく自身を誇張させていた。 「感じているサイト殿、可愛いですわ…あはぁ…わたくしもそろそろ…」 アンリエッタは呟き、彼のモノに手を添え扱きたてる。 手と腰の動きを同時に早め、恍惚とした表情を表すアンリエッタ。そろそろ限界が近いのか、二人とも 切羽詰ったような表情である。 「ぁああ…ひ、姫さまぁ…」 「サ…サイト殿…」 サイトは首を捻りアンリエッタを見つめる。 一段と深く彼の体内に突き刺したアンリエッタは、そんな彼の唇に自身のそれを合わせ、舌を絡ませあ う。 「「んんん…!!」」 重なり合ったお互いの口から呻きが漏れると同時に、サイトの分身からは白濁した液体が放たれ、放 物線を描いて床に点々としみを作った。また彼の体内では、アンリエッタの中から溢れ出た蜜が放たれ、 彼の直腸を潤していく。 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。2人はしばらくそのまま互いの口腔内を犯しあっていたが、扉がノッ クされる音を合図に離れる。 「陛下、そろそろ日が昇る頃かと…」 銃士隊長アニエスの声が扉の向こうから聞こえてきた。 「わかりました。アニエス、少しそこで待っててください」 そう指示を出し、アンリエッタは小さく呪文を唱える。 天上から吊るされた枷の戒めが解けると、サイトはその場に倒れこんだ。先ほどまでの行為によって、全 身に力が入らないのだ。自力で立つ事すら出来ないでいた。 次いで呪文を唱えるアンリエッタ。近くに水差しでも置いていたらしく、その水を使って彼の全身をきれい に洗い流すと、扉の外で待機しているアニエスに入室を促した。 「サイト殿に服を着せ、元の牢にお連れしてください。頼みましたよ、アニエス」 349 名前: 目覚め(6/6) [sage] 投稿日: 2007/12/27(木) 04 32 42 ID f/+EaLjV 俺たちは今、ルイズの実家であるヴァリエール邸に来ていた。 タバサと彼女の母を救い出した帰り、無断で国境を超えた俺たちに罰を与える為に姫さまがここを指定し たからだった。 一騒動あった後、夕餉にする為にルイズや彼女の姉はギーシュたちを呼びに行くために退室して行った。 俺もルイズと一緒に行こうとしたんだけど、姫さまに呼び止められたのだ。 「ご無事でなによりです」 勝手をした俺をそう労ってくれ、更には返上したはずのシュヴァリエのマントを『俺の助けになる為に』と手渡 してくれたのだ。 俺はマントを羽織りなおすと、姫さまは嬉しそうにしてくれた。 でも、その目は過去に見たものとは違っていた。 「ご安心を。もう、女王としての顔しか、見せませぬ」 そう言って左手を伸ばす彼女の瞳の奥に宿る光を見た瞬間、俺は背筋がぞくぞくと震えるのを感じていた。 ズボンの中で、ムスコが頭をもたげるのを感じながら…… fin
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5291.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第13話 落日の決闘!! 四次元ロボ獣メカギラス 登場! 燃えるような夕日の下、その紅い光に照らされてウルトラマンAがトリステイン城を守るように構えている。 迎える相手はバム星人の作り上げたロボット怪獣メカギラス、巨大なパワーを秘めてミサイルと破壊光線で 武装した鋼鉄の巨竜。 今、両者の銀色の体は夕日に照らされ、まるで黄金のような幻想的な輝きを放っていた。 (こいつを倒さないと、トリステインは滅ぼされるわ。サイト、いつもどおりサポート頑張んなさいよ) (うーん。こいつに関してはよく分からないんだが、とにかく勝たないと話にならないからな!!) (来るぞ、ふたりとも!!) かん高い音を上げて、メカギラスの頭部からミサイルが放たれてエースの周辺で爆発を起こし、エースは 城へ被害を出さないために天高く飛び上がる。戦いが始まった。 その様子はトリステイン城を見上げるトリスタニアの街全域からも眺めることができた。 「おい、大変だ!! 外に出てみろ」 「なんだ、城が、城が燃えてる!!」 「それに、怪獣もいるぞ、戦っているのは……」 「ウルトラマンAだ!!」 空中へ跳んだエースは、メカギラスの頭上を飛び越えて反対側に着地した。 「デヤァッ!!」 エースはメカギラスの真後ろから飛び掛る。鈍重なメカギラスは急には振り返れずに後ろはがら空きだ。 (もらった!!) 才人が叫んだように、メカギラスは足をガシャガシャさせているだけでまるで旋回が間に合っていない。 だが、メカギラスはそのままの姿勢のままで首だけを関節部から180度回転させると、ミサイルと破壊光線を エースに向かって連射してきた。 「シャッ!!」 間一髪、エースは側転でそれをかわしたが、流れ弾が街に着弾して各所で火災が発生し始めた。 (街が!) (待て、今はこいつを倒すのが先決だ。住民達も先のベロクロンとの戦いの後の避難訓練が行き届いている。 すぐには惨事にはならない) あの炎の下で、いくつの家が焼かれ、いくつの幸せが壊されているのか、それを思うとエースの胸も痛む。 しかし、その悲劇を少しでも減らすために、今は心を鬼にしてメカギラスを倒さなければならない。 そのあいだにも、夕日の赤い光に、炎の赤が加わり、血の様に街に広がっていく。 「ダッ!!」 エースは、首に合わせてようやく旋回が終わったメカギラスに向けて、再び構えをとった。 そのころ、エースによって窮地を救われたキュルケとアニエス達は、城中に残っていたWEKCと銃士隊を かき集めていた。 「ギーシュ、みんな無事?」 「ああ、僕らはみんな大丈夫さ。それよりも、これはどうなっているんだい? 敵の計画は阻止したんじゃなかったのか」 「あいにく、敵が悪あがきしてね。だめだった。ね」 「ね、じゃないだろ、どうするんだよ!!」 ギーシュ達はどうしていいのかわからずに、完全にパニックになってしまっている。 「お前達、静かにしろ!!」 「はいっ!!」 アニエスは一喝して少年達を黙らせると、銃士隊を見渡して言った。 「全員揃っているな。いいか、第1班は私とともに女王陛下、王女殿下方を城から避難させる。ミシェル、お前は 残りの班を指揮して火災の延焼を全員が避難するまでなんとか食い止めろ」 「はっ、隊長、ご無事で」 「お前もな。だが無理はするな、王族と首脳陣の避難が完了したらあとは各自の判断で脱出しろ」 「はっ!!」 ミシェルは、銃士隊の4/5を引き連れると、燃え盛る炎へ向けて立ち向かっていった。 そしてアニエスは次にギーシュ達を見渡すと、よく通る声で言った。 「それから、お前達!」 「あっ、はいっ!!」 「お前らもミシェル達に協力して消火と城の者達の避難に当たれ、どんな方法を使ってもかまわん。消火不能だと 判断したら破壊してもいい。私が責任をとる!!」 「!?」 「どうした、ウルトラマンが怪獣を抑えている今しか猶予はない。早く行け!!」 「はい!!」 生徒達は、ここでもアニエスの気迫に圧倒されていた。部下の責任を全て自分一人でかぶるなど、簡単に 言えるものではない。 しかし、生徒達にも貴族の子弟としての意地があった。平民に責任を負わせて助かろうなどといった 腐った考えを持った者は少なくともこの中にはいない。水や土の系統の使い手は消火にまわり、炎に相性の 良くない火や風の系統の使い手は『開錠』や『連金』を応用して避難経路を造ったり、『レビテーション』や 『フライ』で水場から消火用水を運んできたりしていた。 だが、火災の勢いはそれらの努力をあざわらうかのように徐々に延焼を広げていった。 そして一方、アニエスらは王女アンリエッタをはじめとした王族や国の重鎮達を避難させるために謁見の間まで やってきていた。 「皆様方、炎がそこまで迫ってきています。ここは危険です、ただちにご避難ください!」 アニエスは狼狽している貴族や大臣達を、隊員達に命じてなかば強引に退去させていった。 「アニエス、来てくださいましたか」 「女王陛下、姫様も早くご避難ください」 しかし王女アンリエッタはかぶりを振って答えた。 「私は最初の戦いのとき、絶対にこの城から逃げ出さないと誓約しました。皆が戦っているというのに王族が 敵に背を向けるわけにはいきません」 「姫様、それは違います。今皆が必死に戦っているのは姫様達を安全な場所までお連れし、ひいてはこの国を 守るためなのです。敵と戦っての討ち死になら私がどこまでもお供します。しかし炎にまかれて死んでは 犬死以外の何者でもありません」 王族の誇りを守ろうとするアンリエッタをアニエスは必死で説得した。 「わかりました。ただし、王族はこの城の主です。この城から離れるのは最後の一人となってからです。 あなた方も、一人も残らず逃げ延びたら、私もここを離れましょう」 「うけたまわりました。それでは、城の東側はまだ火が回っていません。お急ぎください」 すでにここにも煙が流れ込みはじめて来ている。一刻の猶予も無いが、幻獣などの目立つ乗り物を使っては いい的にされてしまうので、走って逃げ延びるしかない。 (だがそれも、ここであの怪物を倒せたらの話だ。首都を壊滅させられては、すぐに滅亡はせずともトリステインの 国力は激減する。ウルトラマンA、頼む、なんとしてでも奴を倒してくれ) 熱気を帯びた廊下を駆けながら、アニエスはエースの勝利を切に願っていた。 だが、ウルトラマンAはメカギラスを相手に、予想外の苦戦を強いられていた。 (くそっ、バリアか!?) メカギラスの弾幕をかいくぐり、掴みかかろうとしたエースはその寸前で、突如見えない壁にぶつかって 跳ね飛ばされてしまった。その壁はメカギラスの全体を包み込んでいるらしく、エースのチョップもキックも 歯が立たない。なおかつ、メカギラスの攻撃は素通しするらしく、バリアの前で立ち往生しているエースに 向かって至近距離から破壊光線を放ってきた。 「グワッ!! ヌォォッ」 直撃を食らったエースは思わずひざをついてしまった。まだたいしたことは無いものの、これを何発も食らっては 危険だ。 (エース、危ない!!) (!?) とっさに右に飛びのいたエースのいたところを、ミサイルと破壊光線の乱射が通り過ぎていき、それが街に 当たってまた火災が広がっていく。 (大変だ、このままじゃ街が燃えちまう!) (ちょっと、このままじゃせっかく復興したトリスタニアが台無しになっちゃうじゃない!! サイト、あんたあいつ のこと知ってるんでしょ、弱点とかないの!?) (そうは言っても、前のメカギラスは記録にあるのはウルトラマン80が異次元から引きずり出したのを 倒したところしかないから、どうやって戦ったのかは分からないんだ!) 悪いことに、才人の知識には、どうやってウルトラマン80がメカギラスを破ったのかというその方法が無かった。 もちろんエースの地球滞在以降に出現した怪獣なので北斗の知識にも無い。少しでも良い材料があるとしたら 誘導装置を全て破壊したことで、メカギラスが異次元に逃げこむことと、テレポート攻撃をしなくなっていること があるが、それを差し引いても、その攻撃力と防御力はすさまじかった。 (もう、だったらあのなんとか光線で決めちゃいなさーい!!) しびれを切らしたルイズに思わずエースもびくっとしたが、今はそれしかないかもしれない。エースは上半身を 大きく左にひねると、投げつけるようにメカギラスに向かって両腕をL字に組んだ。 『メタリウム光線!!』 エースの腕から必殺の光線が放たれる。しかし、やはりメカギラスの直前で、まるでガラスにぶつかった 水鉄砲の水のようにはじかれてしまった。 (くそっ! メタリウム光線でも駄目なのか!!) 時間の経過とエネルギーの消費でエースのカラータイマーが鳴りはじめた。 メカギラスはその場からほとんど動かずに、首だけを旋回させてミサイルと破壊光線を連射してくる。 まさに動く要塞だ、だがその鉄壁の防御を破らなくては勝機はない。 そのとき、さらにメカギラスの破壊光線が飛んできて、とっさにかわしたエースの居た場所で爆発を起こした。 (このぉ、自分だけ一方的に攻撃できるなんて卑怯よ!!) 思わず怒鳴り声を上げたルイズだったが、その言葉を聞いて才人ははっとした。 (待てよ、向こう側の攻撃は通すってことは……エース!) (なるほど、目には目を、バリアには……) 合点したエースは、メカギラスの真正面に立ち、まるで挑発するように身構えた。 当然、メカニズムの塊であるメカギラスには挑発など意味がないが、その電子の頭脳は、停止した標的に 向かって正確に照準を合わせた。 (来る!!) メカギラスの両腕が高く上がり、錆びた扉を思い切り開いたようなこすれた鳴き声が上がったとき、エースは 両手を高く掲げて、そのまま円を描くように体の前で回転させた。 (バリアには、バリアだ!!) 瞬間、メカギラスの頭部から発射された破壊光線がエースに殺到する。しかし、それらはエースの眼前に 出現した丸い光の壁にさえぎられて、そのままメカギラスへ向けて跳ね返されていった。 『サークル・バリア!!』 あらゆる光線をそっくりそのままお返しするエースのバリアにはじかれたメカギラスの破壊光線は、 メカギラス自身のバリアは素通りするという特性はそのままに、メカギラスのボディを直撃し、その内部の 回路や構造体をショートさせ、焼き切らせていく。 (いまだ、エース!!) よろめくメカギラスに向かってエースは跳ぶ。すでにバリア発生装置も破壊されたのか、エースをさえぎる ものはない。 「デヤッ!!」 エースの跳び蹴りがメカギラスの右肩を直撃し、肩の関節部分から盛大に火花が散った。 「テヤッ!!」 後方に着地したエースはすかさず反転して、今度は左肩にキックをお見舞いした。再び花火のように 大量の火花が散り、メカギラスの両腕は力を失ってだらりと垂れ下がった。 (今だ!!) (とどめよ!!) すでにメカギラスは駆動部もやられたのか、全身から火花と煙を吹き始めている。だが、それでも奴は 命じられたただひとつの『破壊』というプログラムを遂行するために、体中の関節をきしませてエースに向き直った。 「シュワッ!!」 エースは胸の前で両腕をクロスさせると一瞬、白い閃光が走った。 「デヤァ!!」 瞬間的にエネルギーが圧縮され、そのまま両腕を水平にメカギラスに向かって押し出すと、腕の間から 三日月形に整形されたエネルギーの刃が飛び出した。 『ホリゾンタル・ギロチン!!』 これぞ、エースがもっとも得意とするギロチン技のひとつ、水平発射されたカッター光線は狙い違わずに メカギラスの首に命中、関節部を切り裂いて頭部を空中に吹き飛ばした。 そして、宙に飛んだ頭部が大地にひしゃげた音を立てて転げ落ちた時、残った胴体も完全にコントロールを 失ったらしく、小さく爆発を起こした後に両腕が関節部からもげて、あとは積み木の城を崩すかのように ガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。 「やったあ!!」 城の者、街の民、貴族平民、あらゆる身分を問わずに、この戦いを見守っていた者達全員から歓声があがった。 もちろん、才人とルイズも同様である。 (よっしゃあ、勝ったぜ!!) (ふん、このわたしにケンカ売ろうなんて百年早いのよ) メカギラスを撃破し、得意満面のふたりであったが、そのときエースは厳しい声でふたりに言った。 (いや、まだだ!!) ふたりは突然のエースの声にびくりとした。メカギラスは確かに倒したはずだ、なのにまだ何かあるというのか? 「シャッ!!」 しかしエースは何も言わずに跳ぶと、トリスタニアの市街地の中に静かに降り立った。 街の人々は、突然やってきたウルトラマンAに驚き、逃げ出す者もいるが、エースはそれにはかまわずに、 今の戦いの流れ弾で火災を引き起こした家屋に、両手のひらをつき合わせて向けた。 「シャッ、デュワッ!!」 すると、エースの手のひらの間から大量の水が噴出して、炎を覆い、みるみる消し止めていく。 『消火フォッグ』 エースの能力の使い道は攻撃だけではない。時にはこうして怪獣の被害にあった人々を救い、その被害を 最小限に抑えることもできるのだ。 「やった、火が消える!」 「火事が消えていくわ、アンナ、ミナ!!」 「よかったな奥さん、これで取り残されてた子供達も助かるぜ!」 「おかあさーん、エース、ありがとー!」 街のあちこちから、人々がずぶぬれになるのも構わずに手を振っているのが見える。 (怪獣を倒しただけでは、まだ戦いは終わったわけではない。戦いのあいまに傷つき、大切なものを失っていく 人々のことを忘れてはいけないよ) エースにそう諭されて、ふたりは有頂天になっていた自分を恥じた。 一軒、また一軒と、エースは延焼のひどい家屋から順に消し止めていく。しかし、燃え上がっている家屋は 多く、すぐにすべてには行き届かない。だが、エースの行動に勇気付けられた人々は、自分達の手で火災を 消し止めようと、力を合わせてバケツリレーなど消火活動に当たっていった。 そんな人々の様子を、才人は頑張れと声援を上げて、ルイズは気恥ずかしそうに唇をかんで見守っていたが、 エースの視界に、炎上し続けているトリステイン城が入ると、ルイズはまるで我が身が燃やされているかのように 叫んだ。 (エース、城が、トリステイン城が燃えてる!! 先に、先にあっちの火を消して!!) だが、エースはそれを承諾しなかった。 (だめだ、城はもうほとんどの人が避難し終わっているが、街の延焼は今消し止めないと犠牲者が大勢出る) (でも、数千年の歴史と伝統の王城を……) (歴史と伝統は千年あれば作れるが、失われた命は何万年たっても戻ってきはしない。ルイズくん、君にも 聞こえるだろう。炎にまかれて苦しむ人々の声が、それに背を向けることが、君にできるのかい?) かつて北斗星司として、超獣の脅威に苦しみ、道を見失った少年や少女達をはげましたときのように、 エースの言葉は、貴族として王家のために尽くすか、それとも力無き人々を守るのかと対立する ルイズの心を揺さぶった。 そして、迷うルイズに才人は、少しとまどいながら話しかけた。 (なあルイズ、俺はお前の言う貴族の誇りと義務ってやつは、正直理解できねえ。だけど、その誇りを守るために 一生懸命に頑張ってるお前は、本気ですげえと思ってる。けど……) (……くっ、うるさいうるさい!! どいつもこいつも人の気も知らないで……貴族として生まれた者がどれだけの 義務と責任を負うかも知らないくせに!) (ああ、確かに知らない。けれど、目の前で家族や友を失おうとしている人の涙より重いものがあるのか?) (…………) ルイズは今度は怒鳴りつけることもせずに、言葉にできない感情を才人に向け、才人はそれを黙って受け止めた。 才人にとって、目の前の光景は決して他人事ではない。地球も、彼の召喚された当時こそ平和であったが、 ほんの数年前までは、毎日のように怪獣や宇宙人の襲来が相次ぎ、ニュースで犠牲になったそれらの人の 名前が読み上げられる度に、次は自分かと心の中で思っていた。 だから、そんななかでいつも必ず駆けつけて、人間のために戦ってくれるウルトラマンの存在は本当に 心強かったし、あこがれた。そして、だからこそ才人には、目の前の人々を見捨てることはできなかった。 やがて、街の人達の懸命の努力もあって、市街地の火災は完全に消し止められた。 「ショワッチ!!」 エースはトリステイン城の上空へ飛ぶと、空中で静止したまま消火フォッグを雨のように降らせた。 しかし、城の火災はかなりなものに拡大しており、多少勢いは弱まったものの、鎮火のきざしは見せなかった。 しかも悪いことに、戦いの後の上に長時間消火にエネルギーを消費したために、エースのカラータイマーの 点滅は、もはや限界に達しようとしていた。 (くそっ、もう力が……) カラータイマーの点滅はウルトラマンの命そのものを表す。その点滅が消えてしまったら、エースは2度と 立ち上がる力を失ってしまうのだ。 だがそのとき、城から脱出していたキュルケ達が、エースのピンチを見て取って、振り返った。 「エースが危ないわ、みんな、エースを助けましょう。城の火をわたしたちで消し止めるのよ!」 キュルケは、ホタルンガとの戦いで、カラータイマーの点滅が危険を表すものであることを知っていた。 しかし、彼女の意気込みとは裏腹に、ギーシュが汗まみれで息も絶え絶えな表情で言った。 「ミ、ミス・ツェルプストー……き、君の言うとおりだ……だけど、もう僕達には、系統魔法どころか、 フライひとつ使うだけの精神力も、の、残ってないんだ……」 そう、トライアングルクラスの使い手で、莫大な精神力を持つキュルケやタバサはまだしも、大半が ドットやよくてラインクラスの力しかない少年達の力はすでに限界にきていた。 「そんな……」 キュルケは愕然とした。自分にはまだ余力があるから気がつかずにいたが、少年達はもう立つだけで 精一杯の力しか残っていない。そして、いくらなんでも自分とタバサだけではエースを助けて城の火を消す などということは不可能。 (みんな、もういい。早く離れてくれ……) 皆の声を上空で聞き、エースは残りの力を振り絞って消火フォッグを放つ、だが、炎の勢いは治まらず、 もはやこれまでかと思われた。そのとき。 「皆さん、下がってください」 キュルケ達の後ろから、鈴の音色のような声が響き、生徒達が思わず振り返ると、そこにはトリステイン王女 アンリエッタが、アニエスら銃士隊に護衛されて立っていた。 「ひ、姫様!?」 「皆さん、ありがとうございます。あとはわたくしがやります」 思いもよらぬアンリエッタの言葉に、ギーシュ達トリステインの貴族らは苦しい息の中で必死になって止めようとした。 「ひ、姫様、そんな、危のうございます。早く、ご避難をっ、ゴホッ、ゴホッ!!」 「ありがとう、けど大丈夫です。アニエス、城の中の者は全員避難したのですね?」 「はっ、城内の者は牢獄の罪人にいたるまで一人残らず、間違いありません」 アニエスの報告を受けて、アンリエッタはこくりとうなづくと、宝玉をあしらった杖を取り出し、そして生徒達を見渡して言った。 「この中に、風系統の使い手で、まだ余力を残している方はいらっしゃるかしら?」 すると、タバサがキュルケに押されて前に出てきた。 「あなたは……いえ、ごめんなさい。わたしに力を貸していただけるでしょうか?」 アンリエッタは、タバサの独特の青い髪の色と、見覚えのある顔つきに一瞬気を取られたが、今は気にしている 場合ではないと思いあたり、誠実に協力を請った。 「……」 タバサは何も言わずに首を前に振った。 「ありがとう。では、皆さんは離れて、あなたはわたくしに合わせて風のスペルをお願いします」 アンリエッタとタバサは横に並ぶと、城へ向かっての呪文の詠唱に入った。系統はアンリエッタが『水』『水』『水』、 タバサが『水』『風』『風』の6乗のトライアングル。それらは重なり、増幅しあって、やがて巨大な水の竜巻を作り出した。 魔法の理論上で言えば、トライアングルクラスの魔法を最高の精度で組み合わせれば、ヘクサゴン・スペルという 通常とは比較にならない威力を生むという。しかし、そのためには使い手が最上級であることを前提に、両者のあいだに 完璧な同調をも必要とする、まさに理論上での極大魔法であったが、そのとき皆は、竜巻にいびつな形ながらも 刻まれた六芒星の輝きを確かに見た。 竜巻は、城を包み込むと、ゆるやかだが大河の流れのように雄雄しく回転し始めた。炎は水の勢いに押されて 次第に小さくなっていくが、まだ火勢は強い。しかし、ふたりの呪文が完成したとき、竜巻はその姿を変えた。 竜巻に含まれる水分が急速に冷却、凝固を始め、水の竜巻は氷の竜巻に姿を変えていく。 「きれい……」 誰とも無くそうつぶやいたように、夕日の残光を受けて、氷の竜巻はまるで金塊が飛び交っているように輝いていた。 しかも、それは空気中の水分はおろか、エースの消火フォッグの水分までも吸い込み、内部を真空に変えて 炎から熱と酸素を奪い取り、あれだけあった火炎を、まるで握りつぶすかのように消滅させてしまった。 「やったやった。火が消えたぞ!」 「やっぱ、王家の魔法は俺達とは段違いだな。王女様、ばんざーい!!」 竜巻が役目を終えて消滅したとき、太陽は完全にその姿を隠し、代わって双月が輝きだし、銃士隊や WEKCの生徒達、ほかにもこの光景を見ていた大勢の人々から一斉に歓声があがった。 アンリエッタは、振り返って微笑むと一礼して言った。 「皆さん、ありがとう。けれど、これはわたくしだけの功ではありません。敵と戦いながら、城の人々を逃がし、 炎の勢いを喰い止めてくれた銃士隊と、魔法学院の生徒の皆様がいてくれたからこそ、わたくしが魔法を 使うだけの猶予が残っていたのです。そして……」 彼女はそこで一旦言葉を切り、空を見上げて、星空を背にして見下ろしているエースに語りかけた。 「ウルトラマンA、この国を、再びヤプールの脅威から救ってくださって、ありがとうございます。トリステインの 民全員を代表して、心よりお礼を申し上げます」 そして、優雅に会釈すると、片手を振って感謝の意思を示した。 エースは、それを見届けると、一度だけゆっくりとうなづいて見せ、満天の輝きを見せる星空へと飛び立った。 「ショワッチ!!」 人々は、エースの姿が夜空に見えなくなるまで、手を振り、ありがとうと叫びながら見送っていた。 「それから、あなたにもお礼を……」 「友達のためにしただけ……気にしなくていい」 アンリエッタが、タバサにも礼を言おうとしたとき、タバサはもう用は済んだとばかりに背を向けていた。 「待って、あなたはわたくしの恩人です。さきほどの魔法は、わたくしだけではあれだけの力は出せません でした。それに、あなたのその髪の色と、魔法の才、あなたはもしかして……」 「姫様、もし本当に私に感謝する気持ちがあるなら、それ以上の詮索はしないでもらえますか」 タバサはそれだけ言うと、友の待つ元へと帰っていった。 (いいえ、わたくしの記憶が正しければ、あなたは間違いなくガリア王家の……しかし、なぜ……?) アンリエッタは、タバサの背中を見送りながらも、心の中から湧き上がる疑問を抑えられなかった。 そして。 「おーい、おーい!」 「!! その声は!?」 「サイト、それにルイズも、まったく悪運の強いやつらだ」 月の光に見守られ、ふたりは仲間達の元へと帰還した。 それから数時間後、かろうじて形だけは焼け残った謁見の間に、生徒達と銃士隊の面々が整列して、 玉座に座ったアンリエッタの言葉を待っていた。 「皆さん、今回の一件は本当にありがとうございました。おかげで、トリステイン城はなんとか機能を 失わずに済み、人命の被害も最小限にとどめられました。もう、何度お礼をしても足りないくらいですが、 わたくしはあなた方のような頼もしい騎士達を持てて、心から誇りに思います」 すると、全員を代表してアニエスが前に出て言った。 「もったいないお言葉です。我ら一同、王家の武器としていつでも命を捨てる覚悟はできています。 また、戦いのときは我らの命、ご自由にお使いください」 「その忠誠には千の感謝でも足りませんわ。ですが、あなた方の命はまずはあなた方のものです。 あなた方の死はあなた方の家族や友人、そしてわたくしの心を痛めるということを忘れずに、 最後まで大切に守り抜いてくださいね」 「はっ!」 アンリエッタの言葉に、彼らはひざをついて頭をたれ、最高位の敬礼で答えた。なかには、ギーシュの ように感極まって涙を流している者までいる。アンリエッタは、しばらくその様子をすまなそうに見ていたが、 やがて意を決したように、悲しげな声で彼らに言った。 「さて、実はここで皆様に謝らなければならないことがあります。今回の功績に対して、全員にシュバリエの 称号を送りたいところなのですが……」 「それに関しては、私から説明いたしましょう」 申し訳なさそうにしているアンリエッタに代わって、隣に控えていた枢機卿マザリーニが前に出てきた。 彼の言うところによると、敵の城内侵入をたやすく許してしまったばかりか、陽動作戦にまんまとはまって 城を無防備にしてしまった以上、彼らに勲章を与えれば軍の無能をさらけだすばかりか、女子供に手柄を すべて横取りされたと軍内部からも不満が出る、だから今回のことは、軍が出払ったときに偶然敵が 襲撃してきたことにして、国民には発表したいということだった。 もちろん、これには生徒達はおろか、銃士隊の隊員達からも言葉には出さないものの、副長のミシェルなどは 貴族のこの汚いやり方に、歯軋りをして怒りを表していた。 また、破壊されたメカギラスの残骸は、後日王立魔法研究所に運ばれて研究材料にされるとのことだったが、 怒りに燃える彼らの耳には届いていなかった。 だがその一方、彼らの怒りと不満を一身に受けているはずのマザリーニは、落ち着いた表情のまま、 残りの句を継いだ。 「以上、"私の"考えに従ってもらうことになる。皆、異論はないな」 異論も何も、王族を除けば国の最高権力者であるマザリーニの意向に背くことはできない。不満を持つ 者達は、(薄汚い鳥の骨め)(王女殿下の心を踏みにじりやがって)(それが貴族のやることかよ)と胸の中で 彼を罵倒したが、唯一アニエスだけは微動だにせず頭を垂れていた。 (例え汚く思われても、全体の感情に配慮しなければならないこともある。だが、それを自分の発案だと 言い切ることで、皆の不満を一身に集めて、王女殿下に災が及ばないようにするとは、マザリーニ枢機卿、 鳥の骨などと揶揄されても、貴方という人は……) マザリーニは、これだけの人間からの負のオーラを一身に受けながらも、痩せた体を揺るがせもせずに 立っている。いや、彼の立場からしてみれば、こんなものは序の口で、利権争いに貪欲な貴族達との 駆け引きでは、それこそこの国を守るために心を鬼にして戦っているのだろう。 王女以外にも、忠誠をかたむける価値のある人間の存在に、まだこの国も捨てた物ではないなと思い、 自身の目的のためにも及ばずながら尽力しようと、アニエスは思った。 やがて、またアンリエッタが皆にねぎらいの言葉をかけて場を和ませた後、この場を締めくくる言葉を述べた。 「銃士隊、そして学院生徒の皆さん。改めて、心よりの感謝をあなた方にささげます。今回は、本当に 申し訳なく思いますが、あなた方の活躍は、永久にこの胸にとどめておくことをお約束いたします。そして、 あなた方でしたら、次は今回以上の手柄を立てることもできると信じています。そのときは、わたくしの 名誉に賭けて最大限の礼を尽くしましょう。共にハルケギニアに平和をもたらさんことを!!」 「杖にかけて!!」「剣にかけて!!」 生徒達と銃士隊の唱和が、猛々しく城を超えて夜空にもこだました。 その声は、平民で使い魔であるという理由で謁見の間の扉の外にある控え室で待たされている才人とデルフの 耳にも届いていた。 「どうやら、話は終わったみたいだな。まったく貴族の話ってやつは長ったらしくていけねえや相棒」 「そうだな。ふぁぁ……俺もう眠いや」 「お前さんは間違っても偉くなれんタイプだね。式典の最中に居眠りしてぶち壊す類だ」 「へん、偉くなんて、なりたくもねえ、や……」 急激にまぶたが重くなり、それっきり才人の意識は深いまどろみの中へと落ちていった。 「相棒、お前さん今日はよく頑張ったよ。その若さで、たいしたもんさ」 デルフは才人の背で、我が子をほめる父のようにつぶやいた。 と、そのとき扉が開き、謁見が終わったルイズやアニエス達が控え室に入ってきた。 もちろん、いびきをかいて気持ちよさそうに眠っている才人の姿が目に入る。当然、きまずい空気が流れた。 「…………」 「あ、娘っ子……相棒もさ、今日はさ、疲れてたんだよ」 しかしデルフの声は、ゆっくりと杖を振り上げるルイズの耳には届かない。 そして…… 「この、馬鹿犬ーっ!!!」 「わーっ!! ルイズ、ここはまずい!!」 ルイズの爆発魔法が炸裂し、皆は壁際まで吹っ飛ばされて、才人は夢の世界から引きずり出された。 「な、何が……げっ、ルイズ!?」 「あ、あんたってやつは……ご主人様がいないと思って、まあ気持ちよさそうに……」 「ま、待て、話せばわかる!」 「うるさーい!!」 本日、最大最後の大爆発が夜空に響き渡った。 逃げる間もなくキュルケもアニエス達も巻き込まれて伸びてしまい。最後にルイズは精神力の使いすぎで、 才人は吹き飛ばされて頭を打ったせいで、ばったりと床に倒れこみ、そのまま寝息を立て始めた。 やがて、轟音を聞きつけた兵士達がやってきて、彼らをどかそうとしたが、そこへアンリエッタが やってきて彼らを止めた。 「そのままにしておいて、朝まで寝かせておいてあげなさい」 「しかし、この聖なる王城の床でこのような無礼な真似を」 「いいのです。彼らはこの国とわたくしの恩人、今はそっとしておいて。ああ、風邪をひくといけませんわ、 毛布を持ってきてあげなさい。命令ですよ」 アンリエッタが最後に強い口調で言うと、彼らは慌てて毛布を取りに駆けていった。 「本当に疲れていたのですね。アニエス、皆さん、本当にご苦労様です」 ひとりひとりの顔を見渡し、最後に突っ伏して眠っているルイズに目をやると、アンリエッタは懐かしそうに その寝顔に語り掛けた。 「ルイズ、あなたは今でも変わりませんね。元気で、真っ直ぐで……」 ルイズの顔にかかった髪を優しくはらうと、アンリエッタは王城の奥へと静かに去っていった。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/aomaru/pages/25.html
終章(終盤) 終章 ~それでも僕らは。~ (終盤)サブクエスト イベント情報(クロスベル市解放作戦攻略後)メルカバ クロスベル市 聖ウルスラ医科大学 アルモリカ村 鉱山町マインツ ベルガード門 クロスベル警察学校 保養地ミシュラム 西クロスベル街道・線路 ゼムリアストーンの欠片ほか 入手項目まとめ取得DP レシピ 書物 絆ポイント(会話) その他 終章 ~それでも僕らは。~ (終盤) サブクエスト 東クロスベル街道の手配魔獣 古戦場の手配魔獣 ノックス樹海の手配魔獣 イベント情報(クロスベル市解放作戦攻略後) クロスベル市を含め各地へ自由に行き来が可能になる メルカバ フランと会話『フランのお守り』を入手 (※絆ポイントが一定値以上必要} ノエルの絆イベントを見ている場合は、若干台詞に変化あり ダドリーに話しかけるとイベント。イベント後にコンビクラフト強化(※絆ポイントが一定値以上必要) 「ポムっと!」のアカウントを入手したキャラ全員と対戦が可能になる全員に勝利するとマスタークオーツ『マギウス』を入手 (入手済みの場合は『水耀珠』)できるので、忘れずに クロスベル市 百貨店《タイムズ》と《タリーズ商店》にて『クロスベルタイムズ⑪』が発売 屋外の店舗が営業再開 特務支援課 屋上で猫に餌やりが可能今まで欠かさず餌をあげていると、マスタークオーツ『カッツェ』を入手 (入手済みの場合は『銀耀珠』) 中央広場 オーバルストア《ゲンテン》にいるウェンディとの会話で『EPチャージⅢ』を3個入手 東通り 《龍老飯店》のチャンホイからレシピ『薬膳麻婆豆腐』を入手(レシピを23種類集めている必要がある。入手済みの場合は『神仙麻婆《麒麟》』)全てのレシピが集まると3つの実績を獲得可能になる 全種類の大成功料理をお地蔵様にお供えすると、マスタークオーツ『クサナギ』を入手 (入手済みの場合は『風耀珠』) 西通り 《グリムウッド法律事務所》でピートに話しかけるとイベント ベーカリー《モルジュ》にいるオスカーとの会話で『ラストハイキング』を入手 歓楽街 カジノハウス《バルカ》2Fのスロット前にいるレクターに話しかけるとイベント 《アルカンシェル》1F客席に入るとイベント (舞台上に入れるようになるためには、リーシャを同行させる必要がある) 《アルカンシェル》舞台上にいるシュリに話しかけるとイベント『シュリの帽子』を入手 (※絆ポイントが一定値以上必要) 旧市街 交換屋《ナインヴァリ》にて『陽溜まりのアニエス 14巻』が交換可能14巻を交換後、《ナインヴァリ》地下にてレシピ『行楽ランチボックス』を入手 ゼムリアストーンの欠片を所持した状態で《ギヨーム工房》のギヨーム親方に話しかけるとイベント。最強武器が作成可能になる オルキスタワー 36F右翼最奥の部屋でディーターと会話イベント 屋上の中央付近で『ゼムリアストーンの欠片』を入手 クロスベル大聖堂 墓地にあるガイの墓前でイベント 聖ウルスラ医科大学 リーシャがパーティにいる状態で303号室のイリアと会話するとイベントイベント後、再度イリアと会話で『舞姫の髪飾り』を入手 (※絆ポイントが一定値以上必要) 中庭の池の前でセシルに話しかけるとイベント『ヴァリアントハート』を入手 (※絆ポイントが一定値以上必要) アルモリカ村 宿酒場《トネリコ亭》2Fの北側の部屋に入るとイベントパーティにワジを入れた状態でケビンと会話をすると『ゼムリアストーンの欠片』を入手 鉱山町マインツ 宿酒場《赤レンガ亭》最奥南側の部屋でイベントヨシュアと会話をすると『ゼムリアストーンの欠片』を入手 ベルガード門 屋上にいるソーニャ司令に話しかけるとイベント クロスベル警察学校 ホアン事務長に話しかけるとイベント。ガルシアと面会が可能 ホアン事務長に予想外料理を全種類渡すと、クオーツ『幻朧』を入手 保養地ミシュラム 《ホテル・デルフィニア》にいる占い師に話しかけると『陽溜まりのアニエス 全14巻』と『ゼムリアストーン』の交換が可能 《鏡の城》最上階の鏡の前で『ゼムリアストーンの欠片』を入手 西クロスベル街道・線路 西クロスベル街道からクロスベル市方面に歩いて行くとたどり着く。 2マップ目の中央南側にある焼けている部分(エステル達の戦闘跡)に『ゼムリアストーンの欠片』が落ちている。 ゼムリアストーンの欠片ほか 各地で『ゼムリアストーンの欠片』を入手可能(最大5箇所)オルキスタワー屋上の中央付近 宿酒場《トネリコ亭》パーティにワジを入れた状態でケビンと会話 宿酒場《赤レンガ亭》ヨシュアと会話 《西クロスベル街道・線路》、2マップ目の中央南側にある焼けている部分 保養地ミシュラム《鏡の城》最上階の鏡の前お気づきだと思うが、鏡の城以外は「神機(アイオーン)」に関連する場所にある。 2周目以降はさらに隠し魔獣1体につき1つ入手できる(5体いるため計5つ)ジオフロントC区画、ジオフロントD区画、旧鉱山、ウルスラ間道浅瀬の小洞窟、湿地帯 すべて倒すと行き先に紅き湿原追加、最後の隠し魔獣がいる。倒すと実績+『光暁の冠(難易度ハード以下)』か『盤古の冠(ナイトメア)』を入手 《ウルスラ間道・中州》で釣りをしているペーターと会話で『虹玉EX』を5個入手 自由行動中にできるイベントやアイテム入手など、準備を終えたら、メルカバで『碧の大樹』へ向かう。 ラストダンジョン突入後も、ラスボス手前まではメルカバで自由に戻ってこれるので心配はいらない。 終章(ラストダンジョン)へ 入手項目まとめ 取得DP 取得DP 15 累計取得DP 405 メインクエスト 取得DP キーアの奪還 ― 合計 ― ラストダンジョンクリアまで続く。 サブクエスト 取得DP 東クロスベル街道の手配魔獣 5 古戦場の手配魔獣 5 ノックスの樹海の手配魔獣 5 合計 15 レシピ レシピ 入手場所 備考 行楽ランチボックス 交換屋《ナインヴァリ》の地下室 陽溜りのアニエス 14巻を交換した後 薬膳麻婆豆腐 東通り・《龍老飯店》のチャンホイから 23種類のレシピが必要 書物 アイテム 入手場所 備考 クロスベルタイムズ⑪ 西通り・《タリーズ商店》中央広場の百貨店・雑貨コーナー《サザーク》 陽溜りのアニエス 14巻 交換屋《ナインヴァリ》で交換 カゲマル装備が3つずつ必要 絆ポイント(会話) キャラクター 場所 日付 イリア ウルスラ病院303号室 ラストダンジョン出現後(要リーシャ) その他 戦闘手帳の情報登録数は最大で249、81.6%(野良のヒドラプラント(+プラントアーム含む)と未遭遇の場合は247、81.0%) 新規の宝箱の回収はない。(中盤と同じく回収率76.9%) 家具などは入手できない
https://w.atwiki.jp/bdff/pages/76.html
6章 繰り返す世界 ~EQUAL~ 5章で4つのクリスタルを解放し、ホーリーピラーへ入るとこの章へ突入する。 5章との変更点 開始直後にイベントがあり、グランシップの甲板から開始。 操作可能となった直後、近くの光を調べると、宝箱の鍵を入手。 飛空艇は最初から所持しており、仲間も4人全員揃った状態での開始。 なお、本章よりカルディスラの宿屋が有料(80pq)となる。 カルディスラの王様に話しかけるとイベント発生(手帳追記あり) クリスタルを3箇所解放するとユルヤナの老師の元へ向かう。 ユルヤナの森の仕立屋へ行くと、5章と同様に祈祷衣の洞窟へ。 アニエスとティズの二人パーティで進み、最奥でユルヤナとの会話イベント。 その後、????のアスタリスク獲得サブシナリオが発生する。 4人を焦点に当てたサブイベントはこの章のみ。8章では彼の者との戦闘だけでアスタリスク入手。 ※6章の聖騎士・暗黒騎士・ヴィーナス三姉妹との戦闘はこのイベント内のみ。 ユルヤナとの会話イベント後、再びクリスタルを解放できるようになる。 これまでのイベントから得たヒントをもとに、ある行動をすると物語が分岐する。 4つ解放してホーリーピラーへ向かうと7章へ。 ただし5章以降に言えることだが、4つのクリスタルを解放した時点で その章をやり直すことができなくなってしまうため、雑記の人物ページや サブイベ・アイテム収集に拘るなら先に消化しておこう。 なお、水のクリスタル解放まで海に着水することができない。 (海賊関連のサブイベが進められない・海上のグランシップに入れない) また吸血鬼城のサブイベも最初からとなる。 以下、ネタバレにつき注意 + 5章以降のシナリオ分岐(ネタバレ注意)(やり直せるので見なくても全く問題ない) 5章以降のシナリオ分岐(ネタバレ注意)(やり直せるので見なくても全く問題ない) エアリーの指示通りにクリスタルを4つ解放後、ホーリーピラーに入ると次の章に移動する 8章でクリスタルを4つ解放後、ホーリーピラーに入ると真終章に移動する 5章~8章でクリスタルを破壊(エアリーの指示を無視してX連打)すると、その直後に終章に移動する 終章をクリアすると、クリスタルを破壊した章の破壊直前の状態で再開される。すでに解放済みのクリスタルは解放されたまま。破壊した章より前の章には戻れない 消化済みのサブイベントは復活しない 真終章をクリアすると、8章の真終章に入る直前の状態で再開される。ただしクリスタルは4つとも未解放の状態になる。8章より前の章には戻れない 消化済みのサブイベントは復活しない (以下、情報募集中) ※ネタバレ注意 + この並行世界における各キャラの現状、生死 この並行世界における各キャラの現状、生死 アニエス…ヴィクトリア&ヴィクターからオリビアを庇って死亡 ティズ…ティルを助けて死亡 イデア…カルディスラにて戦死。伊勢守が遺品として両親の元へ送られる(聖騎士ブレイブ戦でドロップ) リングアベル…直接の表現なし。 オーウェン&カール…生存。 空挺騎士団…元帥が空挺騎士団に出した指令は「巫女の保護」。またアニエスの命が狙われていると思いハインケルに突っかかったイデアに対し、ハインケルはその早とちりを鍛えなおすべく戦闘を仕掛けてくる。 ボリトリィ商会…ボリトリィ撃破後ナジットが用心棒になった経緯を聞ける。 ジャッカル…密かに孤児を養育。 3姉妹…オリビアを捕獲しに3姉妹揃って西の隠れ里に登場。倒すと撤退する 黒鉄之刃…6章からカミイズミの生死の分岐あり(こちらを参照)、撃破後のプリンがグランシップの酒場(夜)で歌っている。 6人会議…アナゼルはイデアの死に絶望し、一行に殺すよう求めてくる。ブレイブもまたイデアの遺品を受け取って悲しんでいた所を、目の前に現れた一行のイデアを見て襲いかかってくる。 ユルヤナ…この世界での4人のもう一つの可能性を提示する。その後4人へ力試し。 ティル…生存。何気にホーリー&ベアリングを撃退している猛者。ユルヤナのサブクエを進めると会える。 オリビア…生存。ユルヤナのサブクエを進めると会える。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1998.html
『魅惑の妖精亭』でルイズ達が働き始めてから数日が過ぎた。 ルイズは酒場で聞いた話などを記憶し、それを書き留めて伝書フクロウで毎晩王宮に送っている。 女王となったアンリエッタの評判が、ウェールズが構えた亡命政権、神聖アルビオン帝国から疎開した人の話、レジスタンスの噂… 他にも、アルビオン帝国はガリアからの援助を受けているとかの、胡散臭いうわさ話も含まれているが、とにかくルイズはうわさ話をアンリエッタに送り続けていた。 王宮を出る前に、アンリエッタに頼まれたことが一つある、それは『民の正直な言葉を聞きたい』というもの。 アンリエッタが国民にどう思われているのか知ろうとしても、王宮の貴族達は良い評判ばかりをアンリエッタに伝える。 まるで、アンリエッタを非難する国民は存在しないと言わんばかりに、アンリエッタを賛嘆する。 だが、それがアンリエッタの不安を煽っていた。 タルブ村での戦いで、アンリエッタはウェールズと共に巨大な魔法を用いて、アルビオン軍を撃退した。 しかし、ルイズがいなければ皆死んでいたかもしれないのだ。 アンリエッタとウェールズだけの戦果ではないのに、女王となったアンリエッタに謁見する者は、兵士達の功績などをみじんも気にかけず、二人のヘクサゴン・スペルばかりを褒めちぎる。 最初は褒められて浮かれていたアンリエッタだが、ウェールズの一言が認識を変えさせた。 『彼の声は誰の声なのだろうね』 その一言が、アンリエッタを深く悩ませた。 自分を取り巻く貴族達のおべっかを信じ込んでいられれば、きっと幸せに違いない。 だがいずれ裏切り者を見落とし、気づいたときには滅びしか残されていないかもしれない。 だからこそアンリエッタは、ルイズに『民の意見を直接聞いてみたい』と告げたのだ。 ルイズは、余計な気遣いをせず、くだらない話も、建設的な意見も、何もかもをアンリエッタに伝えようと決意した。 ある日の晩、伝書フクロウが珍しく返事の手紙を携えていた。 ルイズが中を見ると、そこにはロングビルがアニエスに保護されてトリスタニアに引き返していると書かれており、ルイズを安堵させてくれた。 もしかしたら、魅惑の妖精亭に立ち寄るだろうか? そのときはロングビルをからかってやろうと思いつつ、床についた。 翌日、ルイズは『魅惑の妖精亭』の一室で、ジェシカに化粧を教わっていた。 虚無の曜日を翌日に控え、今夜は一週間で一番忙しい日になる。 「ほら、目元はこうするのよ」 「え?」 「え?じゃないわよ、ちゃんと見てた?ほら。こうやるの」 ルイズが鏡の前に座り、ジェシカが化粧用の筆でアイラインを整える。 「ああ、うん。ありがとう。これって濃い目だから調節が難しいわ」 「ロイズちゃんは元が整ってるから、あっさりとした素朴なメイクが良いわよ、素材の味を生かすってね」 ジェシカの指導を受けながら化粧をしてみると、骨格をいじるのとはまた別の意味で、新しい自分になれる気がする。 魔法学院の舞踏会の時に使ったルージュよりずっと安っぽい、平民の化粧品。 だが、ルイズにとっては何もかもが新鮮だった。 「ジェシカ、こんな感じでどう?」 「綺麗じゃない!それならもっとチップ貰えるわよ」 化粧をしたルイズを見て、ジェシカがルイズの手を引いた。 椅子から立たせると、準備しておいたトレーを渡す。 「ロイズも、今日はもっとチップ貰えるといいわね」 「ありがとう。じゃあ早速行ってくるわね」 給仕口から出ようとしたルイズが、ワルドの視線に気付く。 ルイズはワルドにウインクをして、笑顔で店に出ようとしたが… 一歩足を踏み出したところでUターン。 そのまま物陰に張り付き、焦ったような目つきで店内をのぞき込む。 それを訝しんだワルドがルイズに声をかけようとしたが、ルイズは指を口の前に立てて「静かに」とジェスチャーをする。 ワルドの目つきが変わった。 ルイズがこんな焦る姿など見たことがない。 もしやリッシュモンが城下町を視察し、魅惑の妖精亭に目を付けたのか? ワルドはルイズに近寄り、耳元で呟く。 「何かあったのか?」 「………同級生がいるわ」 「なに?」 「魔法学院の…」 「……なあ、ル…ロイズ」 「何よ」 「今、君は”ロイズ”なんだ。姿形も身長も違う、そう簡単に気づかれるはずはないじゃないか」 「駄目よ、ワルド、あそこに居るのは”風上のマリコルヌ”と”青銅のギーシュ”よ。ギーシュはともかくマリコルヌは危険だわ」 「どうしてだい」 「アイツは、魔法学院の宝物庫より強固な、女子浴場の覗きに成功したと言われてる男よ。オールド・オスマン対策がされた浴場のトラップを超えたのは魔法学院創立以来彼しか居ないと言われているわ」(※噂です) 「あれは僕でも無理だったのに」 「なんですって?」 「いや、何でもない」 「まあいいわ、後でみっちり問いつめるから。…どうしましょ、あの二人が帰るまで店に出ない方が良さそうよね」 「そうかもしれないが…」 一方、ジェシカは、ルイズとワルドの様子を店内から見ていた。 「何やってるのかなー、あの二人」 物陰でこそこそしている二人を見て、頭に?マークを浮かべたジェシカだが、気にしてても仕方がないので接客を再開することにした。 軽く店内を見渡すと、奥の席に座った二人組が、女の子を見ては鼻の下を伸ばしている。 その二人はマントも着けていないし、杖も見あたらない。 だが身なりの良さが貴族であることを示していた。 この店にくる貴族と言えば、ガラの悪い貴族か、世間知らずの坊ちゃんに分けられる。 後者であることを祈りつつ、ジェシカは二人のテーブルに足を向けた。 事は数時間前にさかのぼる。 アルビオンとの戦争を控えたトリステインでは、軍備の増強計画が図られていた。 ギーシュは王宮で働く父と兄に呼び出され、魔法学院を休学して軍隊の訓練を受けろと言われた。 そんな時、偶然にもマリコルヌが、グラモン元帥の下に顔見せに来たのだ。 マリコルヌの父は、息子可愛さのため、マリコルヌを補給部隊に回して欲しいと考えて挨拶に来たのだ。 親の思惑はともかく、偶然にも王宮で再開したギーシュとマリコルヌは、親同士の話が終わった後城下町に繰り出すことにした。 「ふう…」 「どうしたんだ、マリコルヌ、君らしくもない。ため息ばかり出してどうしたんだ」 「うん、ちょっと悩み事がね」 「悩み事?」 「ああ……はあ~……」 秘薬屋の近くを通りかかった時、マリコルヌは長いため息をついて、辺りを見回した。 気のせいか目が少しうるんでいる、が、どこか寂しそうな目つきでもあった。 「まさかマリコルヌ、ここで偶然見かけた女性に一目惚れしたとか?」 からかうような口調で、ギーシュが呟くと、マリコルヌは顔を俯かせて小声で応えた。 「そうなんだ」 「なんだそうか…って、何!?君が一目惚れだって!」 「ちょっとギーシュ!声が大きいいって!恥ずかしいじゃないか!」 「あ、ああ、すまない。でも君が一目惚れとは考えられないねえ。それはどんな人なんだい」 「シエスタって居るだろう?彼女と同じ黒い髪の子でさ、笑顔が素敵なんだ」 「ま、待て待て、それはつまり、君は平民に恋をしたって事か」 「……」 「君が覚悟しているなら僕は何も言わないが……恋愛の先輩として忠告しておこう。平民で遊ぶのは止めた方がいい」 「女の子二人の純情をもてあそぶ、二股のギーシュがそれを言うのか?」 「ちょ、ちょっと待ってくれ!僕はそんな二つ名じゃないぞ、青銅だ!せ・い・ど・う・のギーシュだ!」 「解ったよ落ち付けって。僕だって解っているさ…でもあの笑顔に僕はやられたんだ」 「そうか。まあクヨクヨしていても仕方がない、とりあえず今日はもう魔法学院に戻ろうじゃないか」 マリコルヌの肩に手を置き、ギーシュは『やれやれ』と言いたげに首を横に振った。 「その前に、仕立て屋でシャツ買っていきたいんだ」 「わかったよ、それにしてもマリコルヌが恋愛とはね。仕立て屋で上等なハンケチでも買って、プレゼントしてあげたらどうかね」 「プレゼントしようにも、その娘がどこにいるか解らなきゃしょうがないじゃないか」 「それもそうか。ところで、黒髪って言うのはあんな感じかい?」 マリコルヌは、ギーシュが指を指した方向を見て、絶句した。 「!!!」 「マリコルヌ?どうした?」 「あの娘だ…!」 マリコルヌは無言で、人の影に隠れつつ、ギーシュが指さした女性を尾行し始めた。 ギーシュはマリコルヌの様子に呆れたが、仕方ないなと呟いて、マリコルヌの後を追いかけた。 尾行を続けた二人は、その女性が『魅惑の妖精亭』に入っていくのを確認した。 扉から店内をのぞき込むと、ボディラインが丸見えなビスチェを着けて、女の子がチップを貰っているのが見える。 「いいいいけないよマリコルヌ、こんな店に入ったとバレたらモンモランシーに殺されてしまうよ」 「何を言ってるんだ、ギーシュはもう帰ればいいじゃないか」 「いや、僕は友人として君を見守る義務がある!」 二人は、マントを折りたたんで服の中に隠し、『魅惑の妖精亭』に入っていった。 「お客様、ご注文はおきまりですか?」 ジェシカが前屈みの姿勢で、豊満な胸の谷間を見せつけつつ二人に注文を聞く。 「そそそそうだな、とりあえずワインを貰おうかな」 ギーシュの視線は、ジェシカの胸に釘付けになっている。 「ぼぼぼぼ僕はこの料理を貰おうかな」 マリコルヌも、ジェシカの胸と顔を交互に見て、顔を赤らめつつ注文をした。 ジェシカは二人から注文を受けると、にこりと微笑んで華麗にターンして、厨房へと注文を伝えた。 「なあ、マリコルヌ、凄い店だな」 「ギーシュ、君でもそう思うか」 「女性はもっとおしとやかであるべきだ。この店は下品だよ」 「ギーシュ!言葉は嘘をつけるが、顔は嘘をつけないよ、君の鼻の下は地面に落ちんばかりに伸びているじゃないか」 「い、いや、これはだね。女性を喜ばせる薔薇としてだね!ああああ」 そんな風にギーシュとマリコルヌが店の雰囲気を堪能していると、羽扉が開き、新たな客の一群が現れた。 中年の男性貴族を先頭に、軍人らしき風体の貴族や、お供の下級貴族がわらわらと店に入ってきた。 マリコルヌは、先頭に入ってきた貴族に見覚えがあった。 でっぷりと肥え太った体型に、薄くなった髪、記憶に間違いがなければ税務官の一人『チュレンヌ』だ。 その貴族達が入ってくると店内は静まり返る。 そこに、スカロンがもみ手するような勢いで貴族達に声をかけた。 「これはこれは、チュレンヌさま。ようこそ『魅惑の妖精亭』へ」 チュレンヌと呼ばれた貴族は、ナマズのような口ひげを指でいじると、ふんと後ろにのけぞった。 「ふむ。おっほん! 店は流行っているようだな?」 「いえいえ、とんでもない! 今日はたまたまと申すものですはい。いつもは閑古鳥が鳴くばかりでございまして…。」 チュレンヌは、スカロンを蔑むような目で一瞥し、店内を見渡した。 「なに、今日は仕事ではない。客で参ったのだ。そのような言い訳などせんでもいい」 「お言葉ではございますが、チュレンヌさま、本日は満席となっておりまして……」 「わたしにはそのようには見えないが?」 チュレンヌがそう呟くと、取り巻きの貴族が杖を引き抜き、店内にいる全員に見えるようそれを掲げた。 貴族が杖を抜くということは、命の危険があってもおかしくはない。 杖におびえた客たちは酔いがさめ、一目散に入り口から消えていった。 何が起こっているのか解らないマリコルヌやギーシュはそのままだが、店は一気にがらんとしてしまった。 「閑古鳥と言うのは、本当のようだな!」 ふぉふぉふぉ、と腹をゆらしつつ、チュレンヌの一行は邪魔な椅子を押しのけ、空席となった真ん中の席についた。 ちらりと、取り巻きの貴族がギーシュとマリコルヌを見る、すると軍人らしき貴族が「放っておけ」と呟いた。 ルイズがふと気づくと、ジェシカが隣にやってきて、忌々しそうにチュレンヌを見つめていた。 「ねえ、あいつ何者なの?」 ルイズが小声で呟くと、ジェシカは心底から忌々しそうに話し始める。 「このへんの徴税官をつとめてるチュレンヌよ。あいつの管轄してる区域のお店に来ては、”たかり”をするの、嫌な奴よ! 銅貨一枚払ったことないんだから!」 「そう……」 「あいつの機嫌を損ねたら、とんでもない税金かけられてお店が潰されちゃうの。だから渋々言うこときいてるの」 「なるほどね…」 ルイズはふと、ワルドの表情を伺った。 そこには、ニューカッスル城で会ったときと同じ、冷たい仮面のような表情のワルドがいた。 ルイズは慌ててワルドの襟首を掴み、店の奥に移動させる。 「ルイズ、二十秒でカタをつける。同級生の二人を外にやってくれないか」 「だ、駄目よ!気持ちはわかるけど、今はその時じゃないわ、この店に迷惑をかけちゃ駄目なんだからね!」 「…解っている。だが、僕は、あれが貴族を名乗っているのが許せん」 ワルドの怒りは当然かも知れない、だが、この店で貴族が殺されたとあっては、店の人間に迷惑がかかる。 ルイズにも怒りはある、だが、この店に迷惑をかけたくない。 何とか音便にコトを済ませる方法を考えていたが、不意に顔を上げて、ワルドの袖を引っ張った。 「ワルド、ちょっと手伝って」 「?」 店の中では、チュレンヌが忌々しげに店の女達を見ていた。 誰も酌をしようとしない、それが気にくわないのか、店に難癖をつけ始めた。 「おや! だいぶこの店は儲かっているみたいだな!このワインはゴーニュの古酒じゃないかね?」 チュレンヌに続いて、取り巻きの一人が女の子の衣装に難癖をつける。 「おや、そこの娘の着ている服は、ガリアの仕立てではありませんかな。どうやらこの店は思ったよりも儲かって居るようですなあ」 チュレンヌは実に嫌らしく、ふぉふぉふぉと笑って呟く。 「今年の課税率を見直さねばならないようだな!」 取り巻きの貴族たちも、わざとらしく頷きながら、チュレンヌの言葉に同意した。 「女王陛下の徴税官に酌をする娘はおらんのかね! この店はそれが売りなんじゃないのかね!」 チュレンヌがわめくが、店の女の子は誰も近寄らない。 「触るだけ触ってチップ一枚よこさないあんたに、誰が酌なんか……」 ジェシカが呟くと、不意に奥のテーブルから声がかかった。 『ああ、このブルゴーニュのワインを一つくれないか』 「はい?」 振り向くと、マリコルヌと目が合う。 マリコルヌは何が起こったのか解らないようで、え?え?と小声で呟き、目をぱちくりさせていた。 「はい、ただいまお持ち致します」 ジェシカは笑顔で注文を受けると、マリコルヌの席にワインを届け、丁寧にワインを注いだ。 「どうぞ」 『ああ、ありがとう。とっておきなさい』 ワインを注ぎ終わると、マリコルの手がテーブルの下から跳ね上げられる。 それと同時に、どこからか出てきた金貨がふわりと飛んで、ジェシカの胸に収まった。 「きゃん」 金貨の冷たい感触に驚き、ジェシカは思わず声を上げた。 それを見たマリコルヌは、ジェシカの色っぽい仕草に顔を耳まで真っ赤に染め、恥ずかしさを誤魔化すように腕を組んで笑顔を浮かべた。 ところが、隣に座るギーシュは青い顔をしている。 チュレンヌ達が、中央のテーブルからギーシュ達を睨んでいるのだ。 むこうは五人。その中には軍人らしき貴族もいる。 マリコルヌとは対照的に、ギーシュの顔はどんどん青くなっていった。 (マッ、マリコルヌ、まずいぞ、まずいよ) ギーシュがマリコルヌに耳打ちする。 「え?何を言ってるんだ美味しいワインじゃないか」 だが当のマリコルヌは、思い人のちょっと色っぽい仕草を見ただけで有頂天になり、ギーシュの言葉なんてほとんど聞いちゃ居なかった。 むしろチュレンヌのことなんてすっかり忘れていた。 「はっ、随分と豪勢なことだな!この店は随分儲かってるじゃないか、税率は二倍がいいか、三倍が良いか?皆どう思う」 「この店は風紀を著しく損なうようですな、罰金も支払わせましょう!」 取り巻きの貴族達が、そうだ、そうだと、口々に言う。 それを聞いたスカロンは、何とかご機嫌を取ろうとして、中央のテーブルに近づこうとした。 「あ、あの、チュレンヌ様」 「まったくこの店はなっとらんな!こんな怠けた店でもやっていけるとは、禁制の偽酒でも使っているのかな?」 「いえ!決してそんなことはありません、はい」 取り巻きの貴族が杖をちらつかせながら、『レビテーション』の応用でジェシカを転ばせた。 「きゃあっ」 ガチャンと音がしてグラスが割れ、ジェシカは破片の上に手をついてしまった。 「痛っ…」 それを見た貴族達は、ハハハと笑った。 『そこまでだ』 不意に、誰かの声が笑い声に水を差した。 誰だ?と疑問に思う間もなく、ギーシュに視線が集中する。 「…え?」 だが、当の本人は何が起こったのか解らず、きょとんとしていた。 「何だ小僧、何か言いたいことでもあるのか?」 「え?え?」 実は先ほどのマリコルヌの声も、ギーシュの声も、本人の声ではない。 ワルドが作り出した『空気の管』をギーシュの背後に伸ばし、ルイズが声色で喋ったのだ。 魔法学院の同級生だったとはいえ、二人の声を完璧に再現できるとは思っていなかったが、場の雰囲気のおかげか疑われることは無かった。 マリコルヌの腕が勝手に動いたのも、ジェシカの胸にチップの金貨が舞い込んだのも、ワルドの『レビテーション』。 当の本人達は、何が起こったのか全く理解していないだろう。 ふと、転ばされたジェシカと、ギーシュの目が合う。 ジェシカは手から血を流し、目に涙を溜めていた。 (どうした?僕は女の子を喜ばせる花じゃなかったのか。女の子が泣いていて何もしないのか!僕は!) ギーシュは、チュレンヌ達が恐ろしかった。 実力差も数の差もある、それに、もしかしたら家名も高いかもしれない。 戦っても勝てるはずはないし、そもそもこんな店に入ったこと自体、親の耳に入ったら困ることだ。 でも、女の子の涙を見て、どうして引き下がれようか。 惚れ薬の件では、シエスタに迷惑をかけてしまった。 ジェシカの髪を見ると、惚れ薬を飲んだとはいえ、ワルキューレでシエスタに決闘を挑んだときの後悔が胸に突き刺さる。 今度こそ、僕は女性を守る茨になりたい。 ギーシュは震えながらチュレンヌ達を睨み返し、薔薇の造花を握りしめた。 「大丈夫かい?」 「だ、大丈夫です」 いつの間にか、マリコルヌが怪我をしたジェシカの手を取り、ハンケチを巻き付けていた。 「僕は治癒が苦手だから、申し訳ないね」 「いえ…そんなこと、ありません」 「さ、君はちゃんと怪我を治した方が良い、今日は休ませて貰うといいよ」 そう言って、マリコルヌはジェシカの手を引っ張り、立ち上がらせる。 ジェシカの肩をぽんと叩き、店の奥に下がらせると、マリコルヌは顔を真っ赤にしてチュレンヌ一行を見据えた。 怒りではなく、恥ずかしさから顔を真っ赤にしているのだが、他人はそう見てくれない。 マリコルヌは今、『顔を真っ赤にするほど本気で怒っている』と思われていた。 「はっ、なんだなんだ、君たちは貴族か!若いのに場末の汚い酒場にいるとはなあ、恥を知りなさい!」 自分たちのことは棚に上げ、偉そうに言い放つチュレンヌ。 ギーシュは震えを必死で押さえ込む、シエスタにゴーレムを差し向けた時の、モンモランシーの泣き顔を思い出して、必死に『自分は正しい!』と言い聞かせた。 「無闇に女性を傷つけておきながら、恥を語るのは何処の恥知らずかな?」 「何だと…!」 取り巻きの一人が杖を抜き、席を立った。 どう見ても怒っている。 ギーシュは早くも自分の発言に後悔した。 だが、意外にもそこで、マリコルヌがずいと前に出て反論した。 「汚いのは、貴族の杖をそんなことに使っているお前らの方だっ!」 「貴様!」 マリコルヌの言葉がしゃくに障ったのか、チュレンヌ達は一斉に立ち上がり、杖をギーシュ達に向けた。 (怖い、怖い怖い。怖い!) ギーシュの心中は恐怖に支配されかかっている、だが、今ここで正しいと思ったことを貫き通せずに何が貴族だろうかと思い、心を奮い立たせる。 『命を惜しむな、名を惜しめ』という家訓が、ギーシュの体を辛うじて支えていた。 一触即発の雰囲気が、店内を支配する。 どちらかが動こうとしたその時、勢いよく羽扉が開かれた。 「そこまで!双方杖を引け!」 店内に入り声を上げたのは、女王陛下直属の部隊、銃士隊のアニエスだった。 体をすっぽりと多う外套を身につけており、腰に差しているはずの剣と銃は見えなくなっていた。 チュレンヌは胡散臭そうにアニエスを見て、鼻で笑う。 「ハッ、誰かと思えば、この間シュヴァリエを賜ったという……なんだったかなあ。なあ皆、知っているか?」 「さあ。知りませぬ、粉ひき娘ではありませんか?」 「チュレンヌ様は城下を視察されておる!貴公が何者であっても、女王陛下から賜った徴税のお役目を妨げるなら容赦はしませんぞ」 チュレンヌ達は、あからさまにアニエスをバカにする。 ハハハと笑っている貴族達に向け、アニエスは懐から一枚の羊皮紙を取り出し、見せつけた。 羊皮紙を胡散臭そうに見ていたチュレンヌだったが、その顔が少しずつ青ざめてくる。 ほんの十秒ほどで、店内は驚くほど静まりかえってしまった。 「あ、あの、これは?」 突然、チュレンヌが低姿勢になる。 「解らないか?貴殿を逮捕しに来たのだ。女王陛下は、不当な徴収で私腹を肥やす貴族がいると聞いて、大変胸を痛めておられる。自ら出頭するならまだ罪は軽くなりますぞ。ミスタ・チュレンヌ」 アニエスが氷のように冷たい目つきでチュレンヌを見る。 時間にして一分だが、一時間にも感じられる沈黙が流れた。 チュレンヌは、ふぅ、とわざとらしくため息をついて、杖をテーブルの上に置き、観念したように椅子に座った。 だが… 「…かかれッ!殺してもかまわん!」 チュレンヌは杖を掴むと、ルーンヲ唱えつつアニエスに向けた。 同時に、取り巻きの貴族が動いたが、それよりも一瞬早くアニエスのマントが翻った。 遠巻きにその光景を見ていたジェシカ達は、アニエスのマントの中で、刃物がギラギラと光るのが見えた。 アニエスのマントがふわりと垂れ下がる。 チュレンヌ達は、二度、三度とルーンを唱える、だが魔法は発動しない。 チュレンヌの取り巻き達は、自分たちの持つ杖を見て、ぎょっとした。 杖が真っ二つに折られていたのだ、アニエスのマントが破け、中から二つの刃が姿を見せる。 長さ50サントの刃が、アニエスの近くにいた二人の杖を破壊したのだ。 チュレンヌの後ろにいた貴族二人は、驚いて後ろに下がりつつルーンを唱えようとしたが、一人は青銅のゴーレムに取り押さえられ、もう一人は『エア・ハンマー』で杖を吹き飛ばされていた。 奥のテーブルでは、ギーシュとマリコルヌが杖を掲げている。 二人が手伝ってくれたのだ。 アニエスは、腰が抜けて立てなくなったチュレンヌの真正面に立ち、静かに呟いた。 「自首して頂けますか」 チュレンヌはがっくりとうなだれ、小声で「はい…」と呟いた。 その後間もなく、町の衛兵がやって来た。 チュレンヌとその取り巻き達は馬車に乗せられ、王宮へと送り届けられるそうだ。 『魅惑の妖精亭』の皆は大いに喜び、ワルドはスカロンに抱きつかれ大いに迷惑。 アニエスにもお礼を言おうとしたが、ギーシュとマリコルヌに『協力を感謝致します』と告げた後すぐにどこかへ行ってしまった。 「格好良かったわねえ、あの女シュヴァリエ様」 「ホントよね、貴族ってあんな人たちばかりならいいのに」 『魅惑の妖精亭』の女の子達は、固まってアニエスの話ばかりしており、ギーシュとマリコルヌのことなどこれっぽっちも話ていない。 ギーシュは寂しそうにワインを飲んだ。 「はあ、一時はどうなることかと思ったよ。それにしてもマリコルヌ、僕は君を見直したよ」 「いや、ギーシュも一緒に杖を構えてくれたじゃないか。だから僕にも勇気が出たんだ」 「そんなものかね」 グラスに残ったワインを飲み干して、ギーシュはため息をついた。 コトッ、と小さな音を立てて、ワインがテーブルの上に置かれる。 よく見ると、上等な古酒らしく、古ぼけたラベルには有名な産地の名前が見えた。 「今日は、ありがとうございました。あの…このチップはお返しします。こんなに沢山頂けません」 ワインを持ってきたのはジェシカだった、テーブルの上に金貨を置き、すまなそうに頭を下げる。 マリコルヌは驚いて、両手バタバタと左右に振った。 「ちょ、ちょっと待ってよ。これ僕のお金じゃないんだ、どこからか突然出てきたんだよ」 「そんな、謙遜なさらないで下さい」 「これは謙遜じゃなくて…えーと、ど、どうしよう」 隣を見ると、ギーシュがにやりと笑みを浮かべていた。 テーブルに置かれた金貨を手にとって、ジェシカに渡す。 「彼は口べたでね!僕が少しだけ通訳をしてあげよう。彼はこう言いたいのさ『君は金貨と同じぐらい美しい』と」 驚いたマリコルヌは、ギーシュの言葉を訂正しようとして、慌てて喋りだした。 「ち、違うよ、金貨よりもっと綺麗………あ、いや、その…」 自分が何を口走ったのか途中で気づき、マリコルヌは顔を真っ赤にして俯いてしまった。 だが、ジェシカは嬉しそうでもなく、悲しそうでもない表情で、「ありがとう」と呟き、小走りで店の奥へと隠れてしまった。 「…なあ、ギーシュ」 「なんだい」 「僕、何か悪いこと言ったかな」 「表現が悪かったんじゃないかな。からかっていると思われたとか?」 「そうなのかなあ」 マリコルヌは残念そうに顔を俯かせたが、またこの店に来れば会える、またここに来ようと決意して、勢いよくワインを飲み込んだ。 ジェシカは、店の物置に置かれている、大きな鏡の前に立っていた。 自分の表情をじっと見つめていると、不意に涙がこぼれる。 「ジェシカ」 「あ…お父さん」 いつの間にか、物置の入り口にスカロンが立っていた。 「ジェシカ、どうしたの?」 「…わたし、嬉しいのに、どんな顔をすればいいのか、解らないの」 「笑顔でいいじゃない、ジェシカの笑顔は、みんな好きだって言ってくれるでしょう?」 「違う、違うの…作り笑顔を見せちゃ駄目だって思ったの。本当の笑顔じゃなきゃ失礼だって思ったの…でも、顔が笑ってくれないの…」 「ジェシカ…ごめんなさい、私がずっとあなたにこの仕事をさせたせいで」 「ううん、お父さんは私のためを思ってくれてる。お父さんのせいじゃないわ」 「ね、ジェシカ、今まで嫌なお客さんにも笑顔を見せてきたわよね。今度から無理をしなくていいから、だから、貴方の思うとおりにやりなさい」 「…できない、今更、そんなこと出来ないよ」 「じゃあ、今度あの人が来たら、正直に打ち明けて、謝ってみなさい。ジェシカが本心から笑顔を向けたいと思ったのなら、そうすべきよ」 「…うん」 ジェシカは、父スカロンに顔を見られないように、力一杯抱きついて、涙を流した。 しばらく後、マリコルヌとギーシュの二人は、『魅惑の妖精亭』を出て馬に乗り、魔法学院への帰路についていた。 「なあ、ギーシュ」 「なんだい」 「女の子達、たくさんサービスしてくれたよな」 「ああ」 「領民を守るのも、あんな感じなのかな。僕でも誰かを守れるのかな」 「かもしれないな」 「なあ、ギーシュ」 「なんだい」 「僕、前線に出るよ、親は僕を補給部隊に入れようとしてるけど、それじゃ駄目だと思うんだ。僕は僕なりに頑張ってみたい」 「いい心がけだと思うよ。それにしても…」 「?」 「君があんなに勇気があるやつだと思わなかったよ」 「思うところがあるんだ」 「そうか、深くは聞かないでおくよ」 「うん。そうしてくれると助かる」 マリコルヌは月を見上げた。 あの日、シエスタが空を飛ぶ練習をしていた時、マリコルヌは『遠見』の魔法を使ってスカートの中を覗こうと躍起になっていた。 あの日、突然シエスタの体が不自然な方向に飛ばされたのを、マリコルヌは見てしまったのだ。 『遠見』で周囲を見渡すと、火の塔の一角でシエスタを見ている人物を発見した。 杖を持っていたことから、そいつが犯人だと確信していたが、それを誰かに告げる気にはならなかった。 男は、三年生の寮に入っていった。 そして別の日にも、その男は同じようにシエスタに風の魔法を当てていた。 唇の動きは、エア・ハンマーのルーンを呟いていたと見て間違いはない。 後で調べてみると、その男は『風風のライン』であり、人当たりがよく平民にもやさしい男だった。 そんな男がなぜシエスタの邪魔をしたのだろう。 解らなければ、直接聞いてみればいい。 シエスタに、僕たちの友人に何をするんだと詰め寄ってやればいい。 だが、『ドット』の自分では『ライン』に敵うはずがないと思って、誰にも言わずにいた。 魔法で転ばされ、怪我をしたジェシカを見て、マリコルヌは少しだけ覚悟を決めることができた。 ジェシカの姿が、シエスタに重なったのかもしれない。 月の浮かぶ夜、二人はいずれ来るアルビオンとの戦いに、自分なりの道筋を見つけた気がした。 ギーシュ達が『魅惑の妖精亭』を出てすぐ、ワルドは部屋で遍在を作り、外にいるルイズを迎えに行った。 ルイズは『イリュージョン』を駆使して人目を避け、ワルドに背負われて窓から部屋に入る。 顔を隠していたフードを取ると、そこにはアニエスの顔をしたルイズがいた。 ルイズは「ありがと」と言って遍在の背中から降り、部屋に備え付けられた鏡の前に立った。 「まったく、あの二人なんでこの店に来たのかしら、平民の女の子には手を出さないと思ったのに」 ぶつぶつと呟きながら、アニエスそっくりに切りそろえた髪の毛を体内に再吸収し、ベッドの下に隠した茶色の髪の毛を頭に植え付けていく。 ゴキゴキと音を立てて、ルイズが骨格を調節していると、隣にいたワルドの遍在が呟いた。 「いいものを見たよ、トリステインの若いメイジにも、彼らのような者がいるのだな」 「そう見える?」 「…女の子目当てかもしれないが、それでも立派さ。杖は平民を脅かすために使う物ではない。守るために使う物なんだ。彼らはそれを貫いた」 「そうね……うん。確かにそうね」 体つきを元に戻し、顔の形を調節し終わると、ルイズは窓の外に浮かぶ月を見上げた。 「いずれ、戦争が始まるのよね……誰も、死んで欲しくないな」 ルイズの呟きは、星空に消えていった。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/anime_impression/pages/186.html
ゼロの使い魔~双月の騎士~ レビュー (ジャンル:ファンタジー、ラブコメ) 全12話 監督:紅優 アニメーション制作:J.C.STAFF 評価 ストーリー キャラクター 声優 映像・作画 2点 2点 16点 16点 合計36/100点 感想 ラブコメ作品なのに戦争をテーマにしています(笑) 才人は平和主義者でルイズは名誉の為なら死ねるという事で対立します。 突然の事だったから私も見ていて呆然としましたが、 冷静にならなくてもこの作品で描く内容ではないと思います。 人を殺し殺される戦争は愚かな行為であるのは誰もが認める事だと思います。 名誉の為なら死んでも良い、貴族の誇りだとか、そういうのも違うでしょう。 しかしその程度の説得力もこの作品にはありません。 ストーリーに都合の良いように無理矢理二人を対立させてもねぇ。 もしも真剣にこのテーマを描きたいなら、 アニエスとコルベールをメインキャラにすべきでしょう。 しかしそれでは全くの別作品でしかないわけです。 私だったら無理な事はせず、 前作のようなラブコメを作ればよかったと思います。 何故この作品でこのテーマを描こうとしたのか?さっぱり分かりません。 「ゼロの使い魔~双月の騎士~」アニメ公式サイト
https://w.atwiki.jp/aaawiki/pages/552.html
トップページへ戻る 初期 1stEX 2ndEX 3rdEX 4thEX 5thEX 6thEX 7thEX 8thEX 6thEX 白 レアリティ 名前 0256 C 《新米士官“アリサ・ウィンフィールド”》 0257 UC 《バウンダリー“外園 今日子”》 赤 レアリティ 名前 0266 SR 《なよ竹“かぐや姫”》 0267 UC 《忍法朧影》 青 レアリティ 名前 0271 UC 《炎の魔術師“フレア・シュナイダー”》 0272 C 《純潔の騎士“アニエス・ラ・ブルー”》 緑 レアリティ 名前 0281 R 《ブラッドマスター“未依奈・ハーカー”》 0284 C 《アルテミス・ボウ》 黄 レアリティ 名前 0287 C 《ネクロ・プリンセス“フランチェスカ・アルフェッカ”》 0290 UC 《アーティフィカル・エルフ“シルヴァ”》 黒 レアリティ 名前 0293 SR 《ほんわか天使“ユーリエル”》 0300 C 《月接近》